カワウは食べられるのか――この問いには、単純なはい・いいえで終わらない現実があります。魚を主食とする鳥ならではの強いクセ、処理ひとつで大きく変わる肉質、そして法律や衛生のハードル。カワウは一般的なジビエのように美味しい肉として語るには、少し扱いが難しい存在です。
味としてはまずくはないが積極的に狩ろうとは思わない、そういうたぐいのジビエだと思います。工夫次第で成立するおいしくする料理法もある。このページはカワウを食べた記録の読み物です。
まとめ
- カワウは条件が揃えば食べられるが、味は賛否が分かれるクセの強いジビエ
- 臭いの主因は皮・羽・油で、胸肉は比較的食べやすくモモ肉は臭みが出やすい
- 焼き鳥よりも中華系・煮込み・燻製など香りで包む調理が向いている
- カワウは積極的に狙う肉ではなく、食の冒険として楽しむ実験枠ジビエ
この記事でわかること
- カワウは実際に食べられるのかに対しての答え
- 捕獲に関する法律・ルールと注意点
- 衛生管理と鳥インフルエンザなどのリスク対策
- カワウ肉の味・肉質・臭いの特徴
- おすすめ料理(辣子鶏など)
カワウは食べられるのか
結論から言うと、条件が揃えば食べられます。ただし、世の中で一般的に流通する食鳥である鶏や、人気ジビエのシカ・イノシシと同じ感覚で美味しいと考えているとがっかりします。
カワウは、浅い海から内陸の河川や湖沼まで幅広く見られる大型のウで、全長は約80cmです。カワウの餌は魚を潜水して獲り、歯を持たない鳥なので魚を丸呑みする。このカワウの生態が、そのまま味の話に直結します。かつてカワウは絶滅危惧種になりそうなほど数を減らしましたが、近年はカワウの生息域拡大に伴い、内水面漁業を中心に被害が発生し、広域的な取り組みが進められています。食べるという行為は、この社会的な摩擦の延長線上に有るかもしれません。カワウは高級ジビエではありません。むしろ実験枠ジビエとでも言いましょうか。
当たり外れが大きい。処理の差が露骨に出る。調理法次第で激マズに転ぶ可能性大の肉です。
カワウ捕獲のルール
鳥獣保護管理法の枠組みでは、鳥獣や鳥類の卵については、狩猟による捕獲を除き、原則として捕獲・殺傷・採取が禁止されています。被害防止や研究などの目的で許可を受けた場合に、捕獲などが認められます。
また、狩猟と許可捕獲には次の違いがあります。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 狩猟 | 狩猟期間に法定猟法で狩猟鳥獣を捕獲する |
| 許可捕獲 | 法で定める目的で、許可を受けて行う捕獲。対象は狩猟鳥獣以外も含む |
カワウは狩猟鳥獣なので猟期であれば普通に狩ってもよい鳥です。一方で、狩猟期間外に銃器で捕獲する場合は、有害鳥獣捕獲の許可が必要です。カワウには報奨金を設定している自治体もあるので、猟師であればお小遣い稼ぎがてら晩御飯を手に入れる一石二鳥的な考え方も可能です。カワウの報奨金の記事で現在確認できる報奨金を出している全国の自治体の情報が確認できるので詳しく知りたい方は見てみてください。
カワウの捕獲方法について
カワウを捕獲するには罠か銃かの二択です。カワウの捕獲で最も一般的なのは、銃を使用した方法です。
- 狩猟免許
- 銃所持許可
これらが必要になります。また、狩猟期間外に行う場合は、有害鳥獣捕獲として別途許可が必要です。実際の現場では、漁業被害対策として、行政や猟友会が主体となって銃による捕獲が行われるケースが多いです。
スリングライフル(ゴム銃)について

銃を持っていない人はスリングライフル(銃型パチンコ)での捕獲も可能です。スリングライフルは銃でもボウガンでも無い、自由猟法に当たる方法で、登録も免許も不要でカワウの駆除ができます。(鳥獣保護法第11条のイによって規定)。ただしこの方法も鳥獣保護法の範囲内での捕獲なので、猟期以外で捕獲する場合は許可が必要です。逆に猟期以外では許可は不要です。
衛生と安全
ジビエである野生鳥獣肉については、事業として食肉加工を行う場合、食品衛生法の規制対象になります。基準に適合する施設や営業許可が必要です。また、野生鳥獣肉の衛生管理指針では、狩猟から処理・販売・消費までを通した衛生措置が整理されており、食用として問題がないと判断できない疑わしいものは廃棄が前提になっています。
家庭利用や自家消費のラインでも、十分な加熱が求められています。飲食店が野生鳥獣肉を提供するなら、許可施設で解体されたものを仕入れ、中心温度75℃で1分以上などの加熱を行い、生食提供はしないことが求められます。これは食中毒を予防するためのガイドラインで自家消費でも同様です。加えて、器具や容器の洗浄消毒や、10℃以下での保存も重要です。
もう一つ、野鳥ならではの感染症リスクにも触れておきます。鳥インフルエンザは、感染した鳥や排泄物、死体などへの接触が感染経路になり得ます。野鳥では感染症が起こり得るという前提は常に持つべきです。死体を素手で触らない、手袋を使うといった注意も欠かせません。
ダイオキシン問題
カワウは魚を主食にする鳥で、食物連鎖の上位にいるため、環境中の汚染物質を体内に溜め込みやすい生き物です。ダイオキシン類は環境中に残留しやすく、体内ではとくに肝臓や脂肪に多く蓄積しやすいことが知られています。
しかもやっかいなのは、ダイオキシン類は食中毒のように加熱で解決する話ではないことです。しっかり火を通すことは衛生面では重要ですが、化学物質としてのダイオキシン対策は別問題です。つまり、カワウを焼く、煮る、揚げるといった調理は菌や寄生虫への対策にはなっても、ダイオキシンそのものを無害化する手段にはなりません。
なぜカワウはダイオキシンを溜めやすいのか
ダイオキシン類は、焼却や各種産業活動などを背景に環境へ放出され、土壌や水域へ移り、最終的に底質へ蓄積していきます。そこから小さな生物、魚類へと移り、さらにその魚を食べる鳥へ濃縮されていきます。カワウは河川、湖沼、沿岸で魚を食べる生活をしているため、この流れの最後にいる鳥です。そのため体内濃度が高くなりやすい特徴があります。
内臓は食べるな
ダイオキシンは脂溶性で内臓、特に肝臓に蓄積されるので、肝臓、内臓、皮、脂肪は除去し食べないようにしましょう。
加熱しても安全にはならない
ダイオキシン類は加熱で分解して消えるものではありません。調理によって多少の増減が起きることはありますが、それは脂が落ちる、水分が抜けるといった工程の影響であり、加熱によって無害化されるわけではありません。
どのくらい食べると問題になるのか
一般的な食品からのダイオキシン摂取量は基準内に収まるように管理されていますが、カワウのような野生鳥獣は個体差が大きく、濃度にも幅があります。低い個体なら問題が出にくくても、高い個体では一度の摂取でも影響が無視できない場合があります。
そのため、カワウを日常的に食べることは現実的ではありません。少なくとも、頻繁に食べる対象ではなく、たまに試す程度に留めるべき食材です。
カワウ肉の味と肉質

カワウ肉はどこのジビエ肉を販売しているサイトでも取り扱いがありません。つまり、食べたい方は自分で獲るしかないのが現状です。それは単純に需要がないから取り扱いがないのであり、カワウを食べようと考えているあなたは変わり者の部類に入るでしょう。しかし、そういう食に対しての冒険心が新たな食を開拓してきたのは言うまでもありません。
さて、肝心のカワウ肉の味ですが、食べ物は舌だけで決まりません。どんな匂いか、どんな調理をするか、その日の体調や気分でも印象は変わります。単純な肉質でいえば鶏より肉の繊維が細かいと思います。色は赤寄り、味は鳥系のジビエに共通するレバー風味があります。レバーが嫌いな人は嫌いな味だと思います。
臭いの出どころ
カワウの肉の匂いですが、魚油のような工場の機械のにおいのような臭いが若干します。これはカワウの油の臭いであると思われます。カワウは油壷(しっぽの付け根にある油を分泌する器官)からほとんど油を分泌しません。これがカワウが羽を乾かしたり潜水が得意な理由なのですが、油壷自体はあります。この部分の臭いが一番きついので、カワウのにおいは油から来ているものと推測できます。(冬のブラックバスなんかも内臓脂肪を蓄えていますが、この脂肪が臭いので油分は臭いを溜め込みやすいのだと思います)
胸肉は比較的食べやすく、モモ肉は厳しい
脂肪の有無が臭いの有無に繋がっている、この推論を裏付けるのが部位による臭いの違いです。カワウの胸肉は意外と臭いがなく海系のカモであるキンクロハジロに近いと思います。それでも奥のほうに鼻に抜ける臭みがありますが。
一方でモモ肉は、臭みがきついと思います。モモのほうが脂肪分が多いので臭いがきついのだとおもいます。魚類を調理するときと同様に、塩を振って臭み抜きを行うとこのにおいが軽減されるかもしれませんが、今回はそういう処理は行わず食べました。
硬い
カワウ肉は脂肪分が少ないので火を通しすぎると固くなります。私が食べたのは鶏の廃鶏ほどの硬さではありませんが、それでもゴム感があるほどの硬さでした。これは多分個体によって違うと思います。(鶏でも1歳を超えてくるとだいぶ固くなって噛み切れなくなってくるので、野生の鳥だとなおさら年齢と共に肉が固くなるのだと思います)
カワウの料理
カワウ料理で、焼き鳥はお勧めしません。理由は二つあります。
- 臭いが残っていた場合に逃げ場がない
- 硬くなりやすい
だから方向性は、基本的に次の3つになります。
- 香りで包む
- 煮込みで丸める
- 燻しで上書きする
まず大前提は皮と脂は除去を推薦
皮と羽、油が臭いの元になります。ここをしっかり落とすことが重要です。
臭いには臭いで、カワウ料理は辣子鶏がお勧め
クセのある肉には香りが強い調理法が合います。お勧めはラーズーチー(辣子鶏)です。
材料 2人分
- カワウ胸肉 250〜300g
- 玉ねぎ半分
- ピーマン一個
- 長ねぎ 1/2本
※皮、黄ばんだ脂、筋膜はできるだけ外します。
下味
- しょうゆ 小さじ2
- 紹興酒 大さじ1
- 砂糖 小さじ1/2
※紹興酒がなければ酒でも代用できます。
香り用
- 乾燥赤唐辛子 15〜20本(種が辛いので種は取り除く)
- 花椒 小さじ1〜2
- にんにく 2片
- 生姜 10g
※辛さ控えめなら乾燥赤唐辛子は10本前後でも大丈夫です。
調味料
- 砂糖 小さじ1/3
- 鶏ガラスープの素 小さじ1
- 塩 一つまみ
揚げ焼き用
- サラダ油 適量
※フライパンの底から5mm〜1cmほどあれば十分です。
下処理
- カワウ胸肉は皮を完全に外し、表面の脂や筋膜も落とします。
- 2〜2.5cm角くらいに切ります。
- ボウルに入れ、下味の材料を全部もみ込み、20〜30分置きます。
作り方
1. 香味野菜を切る
- にんにくは薄切りにします
- 生姜は細切りにします
- 長ねぎは1cm幅くらいに斜め切りにします
- 乾燥唐辛子は半分に切り、辛さを抑えたい場合は種を取り除きます
2. カワウを揚げ焼きする
- フライパンに油を入れて中火で温めます。
- 下味をつけたカワウに片栗粉をまぶして広げて入れます。
- 表面が固まったら返しながら、全体をしっかり火入れします。
- 色づいてカリッとしてきたら取り出します。
3. 香りを立てる
- フライパンの油を少し残して、弱火にします。
- 花椒の半量、乾燥唐辛子、にんにく、生姜を入れます。
- 焦がさないように炒めて香りを出します。
4. 仕上げる
- 玉ねぎ、長ねぎ、ピーマンを加えます。
- 強めの火で一気に炒めます。
- 揚げ焼きしたカワウをフライパンに戻します。
- 調味料を加え完成です。
まとめ
カワウは条件が揃えば食べられますが、一般的な肉のように美味しさを期待して食べるものではなく、扱い方次第で評価が大きく変わるクセの強いジビエです。
- カワウは魚食性で食物連鎖の上位にいるため、ダイオキシンなどの環境汚染物質を蓄積しやすい
- 内臓・皮・脂肪はリスクと臭いの両面から避け、筋肉のみを使うのが基本
- 加熱ではダイオキシンは除去できないため、部位選びと摂取頻度で管理する必要がある
- 食べる頻度は常食ではなく、たまに試す程度に抑えるのが現実的
- 味はレバー系の野性味があり、胸肉は比較的食べやすく、モモ肉は臭みが強く出やすい
- 焼き鳥のようなシンプル調理より、香りの強い料理(辣子鶏など)の方が向いている
結論として、カワウは美味しい肉を求めて食べる食材ではありません。



