結論から言うと、カワウは全国レベルでは絶滅危惧種ではありません。環境省レッドリスト2020(鳥類)の掲載種データ(絶滅〜準絶滅危惧などのカテゴリに入る鳥類の一覧)に、「カワウ(Phalacrocorax carbo)」は載っていないためです。
ただし、ややこしいのが、いま絶滅危惧ではないだけで過去には絶滅の危機に瀕していた時もあります。日本のカワウは、1971年に「繁殖していた個体が3,000羽未満」「繁殖地(コロニー)が3か所」まで落ち込み、個体数の激減から絶滅の危機に瀕していました。
そして現在は、生息域の拡大と被害課題が進み、科学的根拠と合意形成を前提に“保護しつつ管理する”対象として扱っています。
カワウの絶滅危惧種扱いは本当か: レッドリストと個体数の変遷

「カワウ 絶滅危惧種」「カワウ 絶滅 危惧 種」と検索すると、過去の話と現在の制度が混ざって出てきます。ここでは、いまの評価と過去〜現在の推移を切り分けて整理します。
まず前提として、環境省レッドリストは「絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト」で、専門家が科学的観点から危険度を評価したものです。一方で、レッドリスト掲載が直ちに捕獲規制などの“法的効果”を生むわけではないと、環境省自身が説明しています。
次に、個体数の推移です。日本鳥学会誌の日本におけるカワウの生息状況の変遷によると、1920年以前は北海道を除く日本各地に広く分布していた一方、19世紀末〜1940年代は違法な狩猟で減少し、戦後も開発や水質汚濁などでさらに減少したとされています。
そして決定的なのが、1971年に繁殖個体が3,000羽未満、繁殖地が3か所まで落ち込んだという点です(この“3か所”は、別資料では愛知・大分・東京由来のコロニーとして説明されています)。
その後の回復について、同論文では、淡水の水質改善(浄化の進展)→魚類資源の増加、そして人による狩猟圧の低下などが増加要因になったとしています。
回復が進むと、今度は増えすぎ局面に入ります。環境省の資料によると2023年時点で8〜10万羽と推定されています。つまり、過去には絶滅しそうだったのですが、劇的に数が回復したというのがカワウ生息数で言えることです。

カワウは保護鳥なのか: 「保護鳥」という言葉の意味
「カワウ 保護鳥」「カワウ 保護」とグーグルでは検索されるが有る背景には、日常語としての「保護鳥」と、法律・制度の用語がズレている問題があります。
法律の大枠から言うと、鳥獣保護法では、鳥獣(鳥類や哺乳類)や鳥類の卵は、狩猟によって捕獲する場合を除き、原則として捕獲・殺傷・採取が禁止されています。被害防止や学術研究などの目的がある場合に、環境大臣または都道府県知事の許可を得て捕獲等が可能、というのが基本要項です。
この意味では、カワウに限らず、野生の鳥は基本的に「勝手に捕まえていい存在」ではありません。言い換えると、一般の感覚で「保護鳥(=獲ってはいけない鳥)」というイメージが生まれるのは自然ですが、実際は
- 多くの野生鳥獣が原則保護される
- 例外として狩猟や許可捕獲が制度化されている
というのが事実です。
現代カワウによる水産被害が増加する中、駆除するべきか否かの議論を難しくしているのが、カワウは外来種ではなく在来の鳥である点です。在来種であるため、被害があるからといって「生態系からの根絶」を前提に考えるべきではない、という議論が有ることも事実で。どのような結果が起こるのかわからないという点で危険であるのは明らかです。
つまり今は、「保護か駆除か」の二択ではなく、保護を前提に、被害が出る局面では個体数の調整を組み合わせる段階に移っています。
今のカワウはどう扱われているか: 狩猟鳥獣と管理の仕組み
カワウは狩猟対象の狩猟鳥獣(46種)の鳥類として含まれています。つまり猟期であれば鳥獣保護法の範囲内でカワウを合法的に狩猟をすることができる鳥であって、保護対象の鳥というわけではありません。ちなみにカワウは2007年に狩猟鳥獣入りしました。
猟期は基本的に11月15日~2月15日までで、カワウに関しては捕獲上限が設定されていないので、猟期中は上限なくカワウを捕獲することが可能です。
カワウは基本的に害鳥として現代では認識されており、自治体と猟友会とで駆除を行うため許可捕獲を実施しています。許可捕獲は狩猟とは異なり、自治体で定める捕獲頭数や捕獲方法をもとに駆除を行う枠組みで、必要に応じてカワウの駆除を行っています。こちらのカワウの駆除についての記事で、カワウ駆除と対策方法を詳しく解説していますので興味のある方はご覧になってみてください。
カワウのように広域移動する種では、無計画な追い出しが分散を招き、結果的に被害が拡大し得る、という国の研修資料もあり、ねぐら・コロニーの把握と個体数管理、被害地での被害防除を組み合わせ、計画的に進める必要があるとされています。
なお、近年は国の「目標」も更新されています。環境省・水産庁の文書では、2014年の方針で「被害を与えるカワウ個体数を10年後(令和5年度)までに半減」を掲げてきたが、個体数は増加傾向で令和4年に約4万2千羽となり目標達成は困難、と検証されています。そのうえで、令和10(2028)年度までに、内水面漁業に被害を与える個体数を平成25(2013)年度水準から半減という形へ見直しが示されています。
用語が混ざりやすいポイント: 絶滅危惧種・保護鳥・外来種
ここで用語の整理を行っておきます。
| 言葉 | ざっくり何を指す? | 根拠になる仕組み | ありがちな誤解 |
|---|---|---|---|
| 絶滅危惧種 | 絶滅リスクが高いと評価された種 | レッドリスト(科学評価)。ただし掲載自体は直接の法的効果を持たない | レッドリスト掲載=捕獲が全面違法 |
| 保護鳥 | 日常語として「獲ってはいけない鳥」の意味で使われがち | 法律上は“野生鳥獣の捕獲は原則禁止(例外あり)” | 保護鳥=どんな場合も一切触れない/保護鳥じゃない=何してもいい |
| 外来種 | その地域にもともといなかった種(人為的に持ち込まれた等) | 外来生物法や自治体の枠組み等(ここでは詳細省略) |
カワウ保護をめぐる議論

カワウ問題だけでなく、鳥獣駆除に関しての議論が荒れやすいのは、「事実関係」だけでなく見えている景色が立場で変わるからです。カワウ駆除推進派は基本的に被害者である内水面関係者です。カワウの食べ物魚で、カワウの個体数増加に伴って漁獲対象種の資源量減少や、遊漁者の減少が収入減につながるという主張で、対策として銃器による駆除、追い払い、巣の除去、卵の不活性化や偽卵への置換といった管理手段が行われています。
自治体の管理計画でも、近年の生息数・分布域の増加に伴い漁業被害や生活環境被害・景観悪化が問題になり、さらに対策の費用や労力が団体運営を圧迫し得ること明言しています。自治体の中にはカワウへの報奨金や補助金を出している事もあり、カワウ対策を強化していることが読み取れます。
一方、保護・共存側(自然保護団体、研究者など)が重視するのは、「在来種であり、生態系の構成要素である」という観点です。カワウが外来種ではない以上、駆除による根絶は許されない、という論点で、駆除ではなく共生をと主張しています。
さらにややこしいのが、同じカワウでも地域差があることです。被害の歴史が長い地域では総数が大きくは変動していない可能性がある一方、分布回復途上の地域では今後の増加が見込まれる、というデータもあります。
この「地域差」がある以上、「保護鳥かどうか」だけで議論しても噛み合いません。必要なのは、(A)どこで、(B)どの季節に、(C)何の被害が、(D)どれくらい出ているか、を共有し、(E)許容できる範囲に調整する設計です。
さらに、共存側は漁獲量の減少はカワウ単体のものではなく複合的なものである点、カワウを駆除しても個体数の増加は止まらなかったというデータ、コロニーを撹乱すると逆に分散・拡大することもあるという主張をもって駆除ではなく
- 防除
- 河川環境整備
- モニタリング
をもってカワウを管理するべきだとしています。
Q&A: カワウの絶滅危惧・保護鳥でよくある疑問
Q1:カワウは今も絶滅危惧種なの?
A:全国レベルでは、少なくとも環境省レッドリスト2020(鳥類)の掲載データにカワウは含まれていません。
ただし、1971年に繁殖個体が3,000羽未満、繁殖地が3か所まで落ち込んだ時期があり、「昔は絶滅危機だった」は事実です。
Q2:カワウは保護鳥だから捕まえたら違法になるの?
A:野生鳥獣は原則として捕獲等が禁止で、狩猟(狩猟鳥獣に限る)や許可捕獲など、制度に沿わない捕獲は違法になります。
カワウは狩猟鳥獣に含まれますが、狩猟免許・狩猟者登録、猟期、区域、猟法などの制限を守る必要があります。
Q3:一度保護鳥だった鳥が、あとから“管理する鳥”に変わることはあるの?
A:あります。カワウはその典型です。1970年代に急減した後、増加・分布拡大が起き、被害問題が顕在化したため、広域協議会や特定計画、狩猟鳥獣指定など、制度も運用も「管理」へ比重が移ってきました。
Q4:カワウは外来種だから駆除されているの?
A:いいえ。日本に生息するカワウは、日本とその周辺に分布する亜種として整理されており、在来の鳥です。
外来種ではないため、根絶を前提にした駆除は許されない、という論点が研究者からも示されています。
Q5:絶滅危惧種じゃない鳥でも、守らなきゃいけないことはあるの?
A:あります。そもそも鳥獣保護管理法では、狩猟による捕獲を除き、鳥類や卵の捕獲等は原則禁止で、例外として許可捕獲が規定されています。
また、法律の目的自体が、保護と管理、狩猟の適正化を通じた生物多様性や生活環境の保全を含んでいます。
まとめ: カワウは在来で、絶滅危惧ではないが、管理が必要な水鳥

カワウをひと言でまとめるなら、「絶滅危惧でも外来種でもないが、管理が必要な在来の水鳥」です。
国のレッドリスト2020(鳥類)ではカワウは掲載されていない一方、狩猟鳥獣として制度上の狩猟対象になり得ます。ただし狩猟は免許・登録・猟期などの制限のもとで行われ、猟期外などは許可捕獲の枠で管理されます。
そして何より重要なのは、「いま多い」ことの背景に、「昔、減りすぎた」時代と、その後の水質改善や禁猟、コロニー保護、食物資源増などがあることです。1971年に3,000羽未満まで落ち込んだという事実は、カワウを単なる“害鳥”として単純化できない理由でもあります。
これから必要なのは、「守るか・減らすか」の二項対立ではなく、どこで何が起きているかを共有し、保護(存続)と管理(被害の抑制)を同時に達成するために、どうバランスを取るかを設計することです。その方向性は、国の方針(被害個体数の目標設定と見直し)にも反映されています。



