養殖業向けの憎き害鳥カワウの駆除と対策方法

水産資源に多大な被害を及ぼす害鳥の代表格、カワウの駆除を含む対策方法について、三重県で漁師兼猟師として活動している方監修のもと、どういった方法が効果有りで、現場ではどのような対策を行っているのか説明します。

見出し

カワウとは?まず知っておきたい生態と特徴

カワウとは

対策とは敵の行動、なぜそういう行動を取るのかを理解して、相手が嫌がることを行うことで相手の行動を変えることが本質的な狙いとなります。したがって、自身で対策をするにもまずは敵がどういう生き物なのか把握することが肝要です。なぜならば、対策を行う上で何故それを行うのか理解していないと、環境が違う場合や、その対策で効果のある要因があなたの対策を行おうとしている場所でのカワウの行動原理に関りがない場合、全く意味のない事になりかねないからです。

カワウの特徴

カワウはペリカン目ウ科ウ属に属する大型の水鳥で、全長は約80~85cm、翼を広げると130cm以上にもなり、体重は約1.5~2.5kgほどになります。オスの方がやや大きいですが、野外での雌雄判別は困難です。羽毛は全身が黒褐色で、繁殖期になると頭部や腰に白い羽が生え、顔の肌の色が赤みを帯びるなどの変化があります。カワウは世界中に広く分布し、南極大陸以外のほとんどの大陸で見られます。日本国内では北海道から九州まで確認されており、特に本州以南の沿岸や河川・湖沼でよく見られます。一方、同じウ科でもヒメウやチシマウガラスは北海道の限られた沿岸にのみ、ウミウ(海鵜)は主に北日本の沿岸断崖で繁殖し冬に南下するため、淡水域まで広く入り込むのはカワウだけの特徴です。

カワウの視力

カワウの視力は陸上では良いとは言えず近視気味であることが過去の実験で示唆されています。(人間の視力の指標に換算すると0.26程度の視力)。しかし、カワウの視覚で優れているのは水中での視力で、瞬膜という水中メガネのような役割をする器官でもって水中でも容易にピントを合わせることができるのです。

カワウの聴力

カワウに限定した研究というのは過去に行われていないので鳥類に関しての情報になりますが、鳥の鳴き声は高く、さえずりも複雑なため「鳥は人間より耳がいい」と思われがちです。しかし実際にはフクロウや猛禽類のように特殊な能力を持つ鳥を別にして、鳥の聴覚能力は人間を超えるものではないとされているます(岡ノ谷,1995)。鳥の可聴範囲は哺乳類より狭く、鳥類の可聴範囲は、一般に100Hz〜7kHz程度で、人間はより広い範囲を聞くことができます。音の高さや大きさ、時間差の聞き分け能力についても、鳥は人間と同程度であり、人間より優れているわけではなく、鳥は「耳がいい」というより、人間に近い範囲の音を聞き取れるが、超高周波には弱いという特徴を持ちます。カワウの聴覚器官の構造も他の鳥類と比べて同じであるため、カワウも人間より耳がいいとは言えないと結論付けられます。
音を利用した鳥害対策では、この性質を踏まえて音の周波数や使い方を考えることが重要となります。

カワウの嗅覚

鳥類は全般的に嗅覚は鋭くなく、視覚で情報を得ています。陸上で生活するキゥイやコンドルといった鳥は大脳に対して嗅球(ニオイを感知する器官)の割合が30%程度度大きいですが、カワウを含む魚食性の鳥は8%~16%であることから嗅覚に関しては優れていないことが推論できます。
また、カワウの外鼻孔(鼻の穴)はひな鳥の時は開いていますが成長になると閉じてしまいます。恐らく水中で水の侵入を防ぐための進化だと思われますが、外鼻孔が閉じていることからニオイに頼って行動をしていない可能性が高いです。

カワウの知能レベル推定

代表例 知能レベル(目安) 根拠(研究での傾向)
カラス・オウム類 カラス、ハシブトガラス、オウム など ★★★★★ 道具使用・問題解決など高度な認知実験の成果が非常に多い。前脳(pallium)のニューロン数が多いことが示されている。
猛禽類など フクロウ、タカ、ワシ など ★★★★☆ 高度な狩り・空間認識能力が求められ、学習能力も高いとされる(種差は大きい)。
潜水性水鳥 カワウ など ★★★☆☆ 潜水して魚を追う複雑な採餌を行う。カワウは学習・弁別が可能であることが示されている。
カモ類など マガモ、カルガモ など ★★☆☆☆ 採餌行動が比較的単純なタイプが多く、複雑な問題解決型の研究が相対的に少ない(賢さがないという意味ではない)。

カワウ研究の中で「音が聞こえたかどうか」というものがあります。この研究中で音が鳴ったら決まった行動をするとエサがもらえるという形で繰り返し反復を行い、きちんと音を聞き分けて正しく反応できることが確認されています。これは、

  • 音の違いを理解する
  • 行動を覚える
  • 同じルールを守り続ける

といった能力があることを意味します。もちろん、これは「知能テスト」ではありません。ですが少なくとも、単なる本能だけで動いている鳥ではないことは分かります。

鳥類の中でカラス、オウム類は「脳が大きい」だけでなく、前脳(pallium)に大量のニューロンが詰まっていることが示されており、脳の構造的にも高度な情報処理が可能なタイプとされています。

一方で、カワウは水面でついばむタイプではなく、魚を追って潜水します。水中では視界が悪く、魚も高速で動くため、

  • 魚の動きを予測する能力
  • 水中での方向感覚
  • 失敗から学んで狩り方を変える能力

が必要になります。これは、カモ類などの「水面で採食する鳥」と比べると明らかに複雑です。こういった根拠によりカワウは少なくともカモ類よりは賢く、カラス類よりは劣るという推定ができます。

カワウはなぜ潜れるの?

カワウはなぜ潜れるのか

カワウは羽毛が他の水鳥より水を通しやすく、空気をたくさん含みにくいため、体が浮きにくい特徴があります。水鳥の多くは羽毛の中に空気をためて浮力を得るため、水を弾くようお尻のボンジリの部分の油を分泌する器官からの油分を羽に塗りますが、カワウはこの器官が発達しておらず羽に油分がほとんど含まれないため水が染み込みやすいのです。そのため、浮力が少なく、他の水鳥よりも容易に水中に潜ることができます。

また足が体の後ろ寄りについており、水中で強く蹴るのに適しており、泳ぐときは翼を使わず、主に足の力だけで水中を進みます。体の形も流線型で、足の指の間には水かきが付いており泳ぐのに適した体形になっています。

カワウはどれくらい潜れるの?

一般的には20〜30秒程度潜ることが多いですが、状況によっては2分以上潜ることもあります。国立極地研究所の加藤明子氏の論文によるとカワウの潜る深さは雌雄で差はあるものの、45メートル近く潜ることもあるとされています。また遊泳速度は最大5m/秒とアユ、イワナ、アマゴ等の川魚の最大突進速度が1.6~2.4m/秒であることを考えると、カワウに狙われた魚はまず逃げられない事が分かります。

カワウの食生

カワウはほぼ魚食性で、魚類であれば何でも食べます。例外的に甲殻類や、両生類も食べるとされていますが、住んでいる環境に依存するようです。1日あたり約400g~600g大型個体では800g程度採食します、これは他の水鳥と比較して特別多いわけではなく体重の割合でみると平均的な量です。

カワウの好きなもの

過去に群馬県水産試験場にて行われた飼育試験では、カワウが魚種によって捕食傾向を示すことが報告されており、単なる機会的捕食だけでなく、一定の「魚種選好性」が存在する可能性が示唆されています。一方で、カワウは基本的に採食効率を重視するため、捕獲しやすい魚を優先的に狙う傾向があります。また、対象水域の魚種多様性が高い場合には、特定魚種への捕食圧が分散される可能性があることも報告されています。

さらにカワウは、群れを形成する魚を捕食する傾向があり、これは効率的に採餌できるためと考えられます。アユに対するカワウ被害が目立つのはこのためで、必ずしもカワウがアユを特別に好んでいるというよりも、アユが群れを作りやすく、放流などによって局所的に密度が高まることで捕食されやすくなる点が関係しています。

カワウの狩りの方法

ワウの大きな特徴のひとつが、優れた潜水能力を活かした「狩り(採食)」です。カワウはカモのように水面で餌をついばむ鳥ではなく、水中に潜って魚を追いかけ、捕まえる“追跡型のハンター”です。狩りの対象は主に魚類で、淡水域から海まで幅広い環境で採食できる点も強みです。

カワウは水面から勢いよく潜り、魚を目で見ながら追いかけて捕獲します。魚を追跡して捕まえるためには水中で獲物を視認する必要があるため、水が濁っている環境や透明度が低い場所では狩りの効率が落ちます。逆に、水が澄んだ川や湖、浅瀬の沿岸部では有利になり、採食活動が盛んになることがあります。捕獲した魚は基本的に丸呑みで、飲み込みやすいように頭から飲み込むことが多いとされています。

採食の時間帯は昼間が中心で、特に朝に活発になる傾向があります。夜間はねぐらで集団で休息し、朝になると採食地へ移動して狩りを始める行動が多く見られます。このため、ねぐらと採食地の距離が近い地域では、毎日決まった時間帯に同じ場所へ現れることもあります。

群れで連携して狩りをするのか?

また、カワウの狩りで特徴的なのは、単独で行動するだけでなく、群れで採食することが多い点です。複数羽が同じ場所に集まり、一斉に潜って魚を追い込むことで、魚の逃げ道を塞ぎ、効率よく捕食することができます。これは人間の漁でいう「追い込み漁」に近い行動ですが、実際は群れにリーダーがいて行動を指揮しているということはなく、個々で魚を追いかけることで結果的に群れで狩りをしているように見えるだけで、効率性を考えて狩りを行っているというわけではないようです。

びっくりすると魚を吐き出して逃げる

面白い行動として、危険を感じたときに胃の中の魚を吐き出し、体を軽くして飛び立つ例も報告されています。捕食した魚を捨ててでも素早く逃げるという行動は、カワウが外敵や人間の接近に対して獲得した生き残り戦略なのでしょう。

カワウの繁殖

カワウはオスは2歳、メスは2.5歳程度から繁殖を開始します。繁殖期は地域によって異なり、一般的には春から初夏にかけて繁殖する個体が多いですが、温暖な地域では秋から冬にかけて繁殖を始める例もあります。近年は都市部の池やダム湖など、餌資源が安定している場所では長期間にわたって繁殖が確認されることもあります。

繁殖は「コロニー(集団繁殖地)」で行われるのが大きな特徴です。数十羽から、時には数千羽規模の群れを形成し、同じ場所で一斉に営巣します。こうした集団繁殖は、外敵への警戒や繁殖成功率の向上に寄与するため、カワウが獲得した生き残り戦略の一つと言えます。

巣作りと産卵

カワウは主に樹上に巣を作ります。川沿いや湖畔の林、島の樹木など、人が近づきにくい場所が選ばれます。枝や枯れ草を運んで皿状の巣を作り、前年の巣を補修して再利用することも珍しくありません。

1回の産卵数は通常3〜4個程度で、雌雄が交代で抱卵します。抱卵期間は約25〜28日です。孵化直後のヒナは、自力では体温調節も十分にできません。親鳥は魚を捕らえ、それを吐き戻してヒナに与えます。巣立ちまでの期間はおよそ50日前後です。ただし、巣立ち後もしばらくは親から給餌を受けながら飛翔や採食技術を学びます。完全に独立するまでにはさらに時間がかかります。

カワウが苦手なこと

カワウは体温調整が同じ水鳥の中では苦手とされています。理由は上述の羽の撥水性で、水にぬれやすいためで、体温の維持が他の水鳥と比べて構造的に難しいからです。

また、同じ理由で水にぬれた後は重くなるので長時間飛ぶことが苦手です。この濡れやすいということがカワウの営巣の条件と深く関わっており、雨風が凌げる場所がカワウにとって大事な営巣条件となります。

カワウの天敵

カワウの天敵は大型の猛禽類やキツネなどの肉食獣ですが、カワウの生息エリアと大型の猛禽類との生息域が重ならず、営巣する場所も四足動物が近寄れる場所にはないので、実質的に天敵とされる生き物はいないと言えます。

カワウの寿命

一般的に3~4年とされていますが10年以上生きる個体も確認されています。生息環境がカワウの寿命に影響が与えているようです。

なぜ漁業にとって“害鳥”と呼ばれるのか

カワウは魚食性で、一日に約500gもの魚を食べる大食漢です。沿岸の海から河川・湖まであらゆる水域で潜水して魚を捕らえるため、漁業関係者にとっては厄介な存在です。例えば、全国のカワウによる被害額は例話5年度で年間85億円とされています。(全国内水面漁業協同組合連合会調査)。小規模自治体の年間予算が30億程度とされていますから、年間市町村3個分程度の予算が消えている計算になります。

一匹当たりの採食量は多くないですが、害鳥と呼ばれるほど被害が大きくなるにはいくつか理由があります。

群れで行動すること

カワウは群れで行動し、一度に多数の個体が養殖池や川に飛来して魚を捕食します。1羽あたり500gでも、10羽なら5kg、100羽なら50kgの魚が毎日失われる計算になり、放流した稚魚や育てた魚が次々と丸呑みにされてしまいます。このように漁業被害が甚大であることから、カワウは漁師や養殖業者から「害鳥」と呼ばれて忌み嫌われる存在になっています。

定着性が強いこと

一度気に入った餌場が見つかるとカワウはその場所に通い続けます。

潜水追跡型で採食の効率が高い

上述しましたが、カワウの水中での移動速度は川魚の2倍程度あるとされており、狙われた魚はまず逃げることができません。また、群れで捕食行動をするため狙われた魚の群れは逃げる場所が無くなり、カワウが満足するまで捕食される結果を生みます。

近年カワウが急増した背景

かつてカワウは日本各地に普通に見られる鳥でしたが、1960年代~70年代に環境汚染や生息地の開発によって個体数が激減しました。特に1971年には全国で3,000羽以下にまで減少し、カワウ は絶滅危惧種と認識されてもおかしくないほど絶滅の危機に瀕し、一時は保護の対象となっていたほどです。しかしその後、狩猟の禁止や有害化学物質の規制による水質改善、さらに各地でのコロニー保護措置などが奏功し、1980年代以降カワウは急速に個体数を回復しました。また、個体数の増えた地域で巣やねぐらが人為的に攪乱されると、一部のカワウが新天地へ飛び散り、結果的に分布域が全国的に拡大する要因にもなりました。

こうした複合的な理由により、現在のカワウ個体数は1970年代以前の水準にまで「復活」しつつあります。環境省によれば、1970年代に全国で3,000羽以下まで落ち込んだカワウが、80年代以降に増加に転じたのは、川が浅くなったり人が減ったりして捕食しやすい環境に変わったことも一因とされています。実際、茨城県では2020年代において県内で6千羽以上のカワウが生息しており、特に夏場のアユに大きな被害が出ていると報告されています。このように、人間の環境改変が皮肉にもカワウにとって好都合となり、個体数の急増と被害の拡大を招いた背景があります。

間違いやすいカワウとウミウの違いとは

カワウとウミウの違い

日本にはカワウの他にウミウ(海鵜)と呼ばれるよく似た鳥がいます。漁業者の間でも混同されやすいのですが、ウミウは法律上“非狩猟鳥”(狩猟禁止)なので、駆除対象として扱えるのは狩猟鳥獣に指定されたカワウのみです。この二種の見分け方として、ウミウの方が一回り大きく、背中や翼の羽毛に緑色の光沢がある点が挙げられます。また、両者は顔の黄色い皮膚(裸出部)の形状も異なり、くちばしの付け根の形がカワウは丸く、ウミウは鋭角(剃り込み状)だと言われます。

遠目には判別が難しいのですが、繁殖期のウミウは頭頂部に白い冠羽がなく全体に真っ黒光沢な羽色であるのに対し、カワウは頭や腿に白斑が出ることなども識別ポイントです。生息環境の違いでは、一般にカワウは河川や湖沼など淡水域まで利用するのに対し、ウミウは沿岸の海寄りに多い傾向があります。ただし実際には両者が同じ水域に混在することもあり、繁殖コロニーで同居する例も知られています。

鵜飼い(鵜を使った伝統的な漁法)に使われるのは主にウミウですが、過去にはカワウも利用されたことがあります。狩猟者や駆除担当者は、誤ってウミウを捕獲しないよう双眼鏡などでしっかり確認する必要があるでしょう。

保護鳥から有害鳥へ変化した理由とは

前述の通り、1970年代には絶滅危惧種並みに減少したカワウは、一転して個体数を回復し各地で「有害鳥獣」として扱われるまでになりました。その転換点として、平成19年(2007年)4月にカワウが鳥獣保護管理法上の狩猟鳥獣に加えられたことが挙げられます。これにより狩猟期にはハンターによる捕獲が可能となり(狩猟期間外は有害捕獲許可が必要)、各地でカワウの駆除が本格化しました。

かつては天然記念物に指定して保護した自治体もあったカワウが、このように“害鳥”扱いへと変わった背景には、漁業被害の深刻化があります。高度経済成長期以降、水質汚染や開発で激減したカワウを人間は保護しましたが、その結果今度は増えすぎて漁業資源を脅かす存在になってしまいました。さらに近年は、アユ釣り人口の減少や河川環境の変化で内水面漁業自体が弱体化しており、そこにカワウの大量捕食が追い打ちをかける状況です。

もともとカワウの糞はリン酸を多く含み肥料として“益鳥”とされた時代もありましたが、化学肥料の普及でその価値もなくなりました。こうして「保護すべき鳥」から「駆除すべき鳥」へと評価が一変したカワウですが、これはあくまで人間側の都合によるものです。カワウ自身に罪はありませんが、人間社会との軋轢から有害鳥として扱われるに至ったのです。

ムクドリもかつては田畑の虫を食べてくれる益鳥と呼ばれていましたが、都市部での個体数の増加による騒音、フン被害から今では害鳥と認識されています。人間の都合で益鳥と呼ばれたり害鳥と呼ばれたり、益鳥・害鳥という区分は、人間の生活環境が変化した結果にすぎません。自然に影響を及ぼしているのは常に人間であることを忘れてはいけないでしょう。

ムクドリの対策はこちらの記事で詳しく論じています。

ここが難しいカワウ対策

カワウの被害は養殖業の魚への被害、河川でのアユやニジマスといった水産重要魚への食害だけでなく、営巣地での糞害による樹木の枯死、糞のにおいによる臭害などがあります。これらの対策を行うにもカワウは警戒心が高く学習能力もあるため一筋縄ではいきません。

賢くて学習能力が高い ― 人間の対策にすぐ慣れる

カワウ対策の難しさの第一は、カワウが非常に賢い鳥だという点です。ちょっとした変化には警戒しますが、それが自分に危害を与えない「ただの脅し」だと分かると、すぐに見破って慣れてしまいます。例えば畑のカラス対策で案山子(かかし)を立てても最初だけしか効果がないのと同様に、カワウも目玉風船や鳴き声テープといった定番の鳥追い払いにはすぐ適応します。

「ここは危ない」と一度でも身体に痛みなどストレスを経験させない限り、長期的な忌避効果は得られないとも言われます。

群馬県野生動物調査・対策報告会で紹介された実験では、飼育下のカワウにおもちゃのピストル音やヘビ型の模型を見せたところ、最初は驚いても何度か繰り返すうちに反応が弱まったという結果が出ています。一方で人間そのものへの警戒心は非常に強く、生きた人が追い立てると逃げますが、これも定期的に続けていないと「どうせ危害は加えられない」と悟られてしまいます。つまり、静的な脅し(置き物や決まった音)だけではすぐ慣れられるため、動的で予測不能な対応が必要であることが示唆されます。

カワウは仲間同士で学習するとも言われ、どこまで本当かは別にしても「あそこの爆音機は安全だ」「この網は抜けられるぞ」といった経験が共有されてしまえば、対策が効かなくなる恐れがあります。高い学習能力と順応性を持つカワウ相手には、常に一歩先を行く工夫と根気が求められます。

これは畑のカラス対策鳩対策などの鳥類やイノシシ対策鹿対策などの獣類全般に当てはまることで、野生の生物は人間が考えるより遥かに頭が良く、複合的な対策を取らなければ時間と共に効果は減衰していく物です。

群れで行動するため追い払っても戻ってくる

カワウは常に群れで行動する習性があります。一羽が餌場を見つけると次々に仲間が集まり、大きな群れになります。対策でその場から追い払っても、群れ自体は別の場所に移るだけで、しばらくすればまた戻ってきてしまうことが多いのです。特に厄介なのが、「代わりがいくらでもいる」という点です。仮に地元で見かけるカワウをかなり駆除・追い払いして数を減らしても、遠方のコロニーから新手が飛んでくる恐れがあります。カワウは一箇所に留まらず広域に動くため、局所的に駆除しても周囲から補充されてしまうのです。

1日で数十km移動する強い飛翔力

カワウは飛ぶ力も非常に強く、1日に十数kmから時に50~60km以上もの長距離を移動することができます。朝に内陸の川で採食し、午後には遠く離れた沿岸のねぐらに戻る、といった行動を取ることも有ります。実際、山形県のカワウ管理指針によると、1日で200km近く移動した個体もいたとの報告もあります。多くの場合、ねぐらから餌場まで10~20km程度の範囲を行き来していますが、エサが乏しくなれば更に遠征することもあります。飛ぶスピードは時速50km以上とも言われ、空中では水平方向に長距離を滑空しながら移動するため、地理的な障壁もあまり意味をなしません。

この広い行動範囲ゆえに、カワウ対策は一つの自治体だけで完結せず、広域で連携しないとうまくいかないというわけです。

カワウ対策と駆除方法

ここまでカワウについての基本情報を説明してきましたが、結局どうすればカワウの被害を防ぐことができるか?この記事の主題について書き進めていきます。以下は、全国の漁協や内水面養殖業者が実際に使用した対策について、アンケート結果をもとに複合的に評価したものです。

手法 費用 効果 持続性 総合コメント
猟銃 ★★★ ★★★★★ ★★★★ 即効性・個体数抑制効果が高いが、許可や安全管理が必要
空気銃 ★★ ★★★★★ ★★★★ 最近のパワーの高いモデルで狙撃する形での効果は高い
スリングライフル ★★★★ ★★★★ 空気銃ほど射程は無いため、身を隠す遮蔽物が必要になるが猟師に頼らないで駆除を行えるのは◎
釣り・流し針 ★★ ★★ ★★ 地元の住民からかかって暴れているカワウが見るに堪えないとクレームが入ったケースあり
巣・卵・ヒナの除去 ★★★ ★★★★★ ★★★★★ 繁殖抑制として最も持続的効果が高いが、継続管理が必要
ロケット花火・打上 ★★ ★★★★ ★★ 即効性は高いが慣れが早い。騒音制約あり
爆竹 ★★★ 安価で即効性あり。ただし数日〜数週間で慣れる
銃器音(音響のみ) ★★ ★★★ 音のみは慣れやすい。単独使用は非推奨
スターター・紙雷管 ★★ ★★★ 爆音系と同様に短期向き
爆音器 ★★★ ★★★ 広域対応可能だが学習されやすい
サイレン(拡声器) ★★ ★★ 効果は限定的。慣れやすい
フラッシュテープ ★★ 低コストだが単独では弱い
かかし・猛禽山子 ★★ 設置直後のみ効果。慣れが早い
鳥の目 効果は非常に限定的
鏡のぼり 持続効果はほぼ期待できない
ペットボトル流し 簡易的だが実効性は低い
ペットボトル風車 同上。補助的手段
人の手による追い払い ★★★★ ★★★★★ ★★ 効果は高いが人件費負担が大きい
エアガン ★★ ★★★ ★★ 補助的に有効

カワウ被害を防ぐには、多角的な対策を組み合わせた総合防除が鍵となります。一つの方法だけで完璧に防ぐことは難しく、現場の状況に応じて物理的防御・音光による忌避・化学的忌避・テクノロジー活用・環境整備など様々な手段を講じることが推奨されています。ここでは主要な対策方法について、それぞれ効果とポイントを述べます。

カワウの捕獲・駆除

駆除がもっとも確実にカワウの個体数を減らすことのできる方法ではありますが、営巣地での駆除に限っては広域的な対策を行わなければカワウが他方へと散らばってしまい、結果的に数が増えることが指摘されています。しかし、養殖地に関しては駆除ができるなら積極的に駆除を行ったほうが飛来数低下、群れの定着を防げるので早期に手を打って駆除をしてしまうことをお勧めします。

鳥獣保護法

カワウは狩猟鳥獣なので狩猟期間(11月15日~2月15日)の間は駆除が可能です。この期間であればスリングライフルでの駆除も合法的に可能ですが、あくまで鳥獣保護法の範囲内で狩猟が許可されている場所での駆除が可能という意味で、免許や登録が必要ないからと言ってルールを理解せずに駆除を行うことは出来ません。

この期間以外で駆除を行うには有害鳥獣捕獲許可申請を行い許可をもらわなければ法律違反となります。許可が下りるかどうかは自治体の判断によるのでスリングライフルを使用する予定の方は自治体に確認をしてください。使用者が狩猟免許を持っている場合、鹿児島県の自治体では許可が下りている実績があります。

銃器での駆除

散弾銃、エアライフルでの駆除は最も効果の高いカワウ対策ではありますが、猟友会の支援が必須となる点や、駆除の許可を取って安全管理を徹底しなければ行うことができないため、ハードルが高い方法でもあります。さらに、養殖場内だと建物が近くにあったり住宅が近くにあるとそもそも発砲自体行えない場合があるため、万能な対策方法ではありません。

自身で狩猟免許を取り、銃の所持許可を得れば必要な時にすぐ対処することも可能ですが、所持できるまでの費用が20万程度、3か月程度の期間が最低でも必要となり、年間の維持費も4万程度かかります。さらに、講習や移動、射撃練習の時間も考慮すると時間的な負担も考慮しなければなりません。

スリングライフルでの駆除

スリングライフルは、銃器と比べて導入のハードルが圧倒的に低く、思い立ったときにすぐ運用を開始できるのが大きな強みです。散弾銃やエアライフルのように高額な初期費用や長い準備期間を必要とせず、設備投資を抑えながら即戦力として活用できます。年間維持費もほぼかからず、ランニングコストを最小限に抑えられるため、継続的な対策として非常に経済的です。

また、発射音が静かで法的には銃器ではないので民家が半径200メートル以内に10軒以上ある場合でも法的な制約を受けず、住宅や建物が近い養殖場でも運用しやすい上に、時間帯の制約も受けないという利点があります。

コスト面、機動性、運用のしやすさという点で見ると、スリングライフルは「自分の判断で、必要なときに、すぐ対応できる」実践的な駆除手段で養殖業だけにとどまらず、害鳥被害対策用品として、畜産、農業、自治体と幅広い業界で取り入れられています。

釣り針、流し針

ニジマス、ヤマメ、アユなどの生餌に針をつけてカワウを捕獲する方法ですが、水深が浅い場所で仕掛けるとサギがかかってしまうため、水深70センチ以上の場所で仕掛けなければなりません。仕掛ける手間がかかり、大量にカワウを駆除できるものではなく、居着きの個体を駆除する目的で使用する程度の効果しか得られません。

また、針にかかったカワウは暴れるので養殖中の魚にストレスを与えてしまうため、あまりお勧めの方法とは言えません。

巣・卵・ヒナの除去

巣、卵、雛の除去は個体数を減らすという意味では最も効果的な方法ですが、これは広域で行うべき施策で、養殖業者単体で行うには負担が重すぎます。行政、漁協が一体となり行うべき施策であって、養殖業者にはあまり関係のない方法であるので、詳しい方法は割愛しますが昨今では巣にドライアイスをドローンで投入して卵の負荷率を下げて個体数を調整する方法が主流のようです。

エアガン

東京マルイが出しているエアガンは無風で飛距離60メートル近く飛ぶものもあるので、カワウを見つけたらバイオ弾(分解性弾)で追い払いを行う方法です。弾が当たってもカワウにダメージを与えることはできないので強烈な恐怖心を与えることはできませんが、巡回に行く時に持っていくと労力の半減が期待できます。ただバイオ弾といえど数年は分解されずに形を保ったままで、水中に落ちると分解速度も遅くなるため球が残ることを気にする人は使用しないほうがいいでしょう。

音での追い払い

駆除までいかずとも追い払う事でその場所に定着を防ぐことができます。ただ集中して追い払いを行わなければすぐ戻ってきてしまう側面があるので、人的負担が大きいのは追い払いのデメリットでもあります。追い払いを単体で行うよりも駆除、防除の方法と組み合わせて使用する補助的な扱いがカワウ対策での追い払いの位置づけとなります。音での追い払いは近隣住民とのトラブルになる場合もあるので使用場所、使用時間に注意が必要です。

ロケット花火・打上花火

対象に向けてロケット花火や打ち上げ花火で威嚇を行う方法で、害獣対策ではよく使用される方法です。爆発音がするので群れに対して非常に有効で、実施時には驚いて逃げていきますが、効果は短期的です。一度逃げても直接的な危険はないと学習されるとすぐに戻ってくることが多いです。ロケット花火の指向性をロケット花火発射台で上げると使用しやすいです。

爆竹、銃器の射撃音、スターターピストル

いずれも爆発音を発する物で、効果は全く同じです。音のみなのでロケット花火より効果は薄いです。

爆音機

爆音機とは、大きな音で鳥獣を驚かせる装置の総称です。この装置は音を使ったイノシシ対策でも使われますが、ガスで爆発音を発生させるものと電気式で爆音を流す2タイプがあります。一定時間で爆発音を鳴らす機能も付いており、5~6万程度で購入が可能です。これも慣れが生じてくると効果範囲が狭くなってくるため、恒久的な対策として使用はできません。また、民家が近くにあると苦情が来るため使用場所は限定的です。

サイレン

電子音や警報を鳴らすことのできるサイレンを使用した追い払い方法で、これも慣れが生じて効果が長続きしません。人工的な音は比較的早く慣れが生じると過去の実験から示唆されています。

視覚的な追い払い方法

カワウの天敵の置物や、動きを以って警戒させ追い払うというのが視覚に訴える追い払い方法で、設置するだけで効果が見込めるので、手間という意味では負担が少なく対策を行える物です。一方で、設置しっぱなしにした場合危険がないと学習され効果が全くなくなるので、位置を変える、使用している物を変えるなど小まめな入れ替え作業が必要となります。

鳥よけテープ

一般的に市販されているきらきら光る鳥よけテープを設置することで、太陽光の反射を利用してカワウに警戒心を与える事を目的とした対策方法で。費用も安くどこでも買えるものなのでダメもとで設置してもいいかもしれません。ただし効果は限定的です。

案山子、天敵の模型

人間を模したかかしの設置や猛禽類を模した模型を設置し警戒心を煽る方法で、鳥よけテープよりは若干効果が高いかなと思います。しかし、中、長期で見ると効果がなくなるので、入れ替えは必須です。

目玉風船

風船に鳥の目のような模様が入ったものを吊り下げておくという方法で、1つ500円程度で購入できます。耐久性に難ありで空気が抜けて使えなくなるのが結構早いです。前にカラス用に使用したものだと一か月くらいでひもを通す部分の亀裂から空気が抜けて使えなくなりました。

鯉のぼり

千葉県の漁協で設置したところカワウがいなくなったとの情報アリ。しかし情報が一軒のみなので、効果があるのかどうかは言い切れない点に注意が必要です。

ペットボトル流し

川にひもでつないでペットボトルの中にキラキラ光るテープを入れて、カワウが現れるエリアに設置したところカワウが着水しなくなったとの情報があります。

人の手による追い払い

カワウが一番怖がるのが人です。カワウを見つけたら近づいて追い払うことや、定期的に巡回を行いカワウに圧をかけて近づかせなくする方法です。これは労力がかかりますし、巡回を続ける必要があり負担が大きい方法です。費用はかかりませんが、自身の時給を考えると費用対効果が高くはならないかもしれません。

防御的な策

最も確実な対策は、物理的にカワウをシャットアウトすることです。侵入させない、防御壁を作るという発想で、養殖場などでは基本となる手法です。ただし物理的対策はコストや手間もかかるため、コストとリターンの兼ね合いを見極めることが必要となります。

防鳥ネットの張り方と強度の確保

防鳥ネットの使用は、養殖池や釣り堀などで広く使われるカワウ対策です。池や水面上を網で覆い、カワウが水面に降りたり潜ったりできないようにします。効果は高いのですが、ポイントは隙間を作らず、丈夫に張ることです。

  • 隙間なく覆う: 少しでも開口部があると、カワウはそこを狙って侵入します。池の端や配管の周りなど、人間が「ここは来ないだろう」と思うような場所からも侵入された例があります。従って池全周をカバーし、出入り口や池の縁もきっちりガードする必要があります。
  • 適切な網目サイズ: 網目は小さすぎると光や餌やりに支障がありますが、大きすぎるとカワウが首を突っ込めます。目安として3cm以下の目合いが推奨されます。柔らかいテグス状のものより、絡まないしっかりした網材が望ましいです。
  • ピンと張る: 網がたるんでいるとカワウが上に乗って押し下げ、水面近くの魚を捕ろうとします。張力を保ちピンと張ることで鳥が乗っても魚まで距離があり捕れません。また、たるみが少ない方が鳥が絡まって怪我するリスクも下がります。絡めて駆除する目的ならたるんでるほうが良いのかもしれませんが、、、、
  • 強度と耐久性: カワウは嘴で網を突き破ろうとしたりします。耐候性の高いナイロン製など強靭なネットを使い、補強ロープで格子状にサポートするなどして破られにくい構造にします。
  • 定期点検と補修: 網は日光で劣化したり、台風などで破れることがあります。定期的に穴が開いていないか点検し、見つけ次第すぐ補修することが大事です。一箇所破れるとそこから次々に破壊されかねません。

防鳥ネットは、養殖池など限定的な水域であれば非常に有効で、「物理的に完全に覆えばカワウは入れない」ため被害を防げます。ただし設置コストは面積に比例して高く、広大な湖や河川には非現実的です。以下は900㎡の池を想定した試算表です。

防鳥ネット資材コスト試算表(30m × 30m=900㎡池/上面カバー)
区分 仕様 数量 単価(目安) 小計(円) 備考
ネット 防鳥ネット 32m × 32m(1,024㎡) 1式 700円/㎡ 716,800 25mm目相当単価で試算
支柱 単管パイプ 4m 12本 7,598円/本 91,176 角4本+各辺中間2本×4辺(約10mピッチ)
クランプ 直交クランプ 24個 359円/個 8,616 ロープ固定・頭部補強
固定ベース 支柱根元補助 12個 439円/個 5,268 地盤条件により増減
ターンバックル M12クラス 8個 999円/個 7,992 外周ロープ緊張用
ロープ 5mm × 200m巻 3巻(600m) 7,330円/巻 21,990 周囲+格子+余長10%
結束バンド 耐候300mm(100本) 10袋 541円/袋 5,410 約1,000点固定想定
セメント 25kg袋 48袋 659円/袋 31,632 支柱1本あたり4袋想定
合計(税別) 888,884 施工費・運搬費は含まず
予備費10%込み 977,772 端部補強など想定
予備費15%込み 1,022,217 風荷重・現場条件悪化想定
設置時間試算(3人作業想定)
工程 内容 人数 作業時間 工数(人時) 備考
段取り 墨出し・搬入 3 1時間 3 搬入経路で変動
穴掘り 12か所 3 2時間 6 地盤硬度で増減
支柱建て込み 垂直出し・仮固定 3 3時間 9
基礎施工 セメント投入 3 3時間 9 硬化待ちは別
ロープ張り 周囲+格子 3 4時間 12 格子ピッチで変動
ネット展張 展開・仮留め 3 3時間 9
本固定 約1,000点固定 3 4時間 12 固定点増で時間増
調整 張力再調整 3 1時間 3 初期たるみ補正
合計 21時間 63 実作業2日想定

池上にテグスを張る方法

カワウ対策でテグスの張り方

カワウのように水面へ着水し、さらに離水時に助走を要する鳥では、ある程度の大きさの場所でなくては飛び立てなくなるので着水しません。テグスを張ると着水時に邪魔になって着水できない、飛び立つことも難しくなるため、物理的にカワウにとって近づけなくなる事を狙う対策法です。上述のネットを張るというのは資材コストが割高になってしまい、収益に対して見合わないケースが多々あるため、コストがかからないテグスを張る方法のほうが現実的でしょう。

張り方や使用する糸、カワウの執着度によりますがテグス対策の防除効果は設置者のアンケート結果から河川で86%以上となっており設置コストも低いため基本的な対策法として使用することが推奨されます。この数字は河川でのテグス張りの効果についてで、さらにテグスの張ってある間隔が50cm~10メートルとバラバラであるため、適切な間隔でテグスを張れば養殖場での防除効果は限りなく100%に近づけることが可能であると思われます。

テグスを設置する高さは5メートルから水面上30〜40cmまで様々で、高さによっての防除効果について実験された記録がないためどの高さが最適であるか断言はできませんが、上空から飛来するカワウの行動を鑑みれば高さは防除効果を決定づける因子ではないと推論できます。

したがって、ラインの張る高さは人の作業の邪魔にならない程度の高さで良いと思われます。

使用する糸の太さと色

使用するテグスの色と太さは防除効果に相関性があるかもしれませんが、現在の実験、研究では何色が良いのか結論は出ていません。したがって、色は透明でも黒でも、身近に手に入るテグスでよいと思われます。太さはカワウが接触する可能性があるので10号以上のラインが推奨されています。

張り方の間隔と張り方のパターン

テグスは必ず30㎝以下の感覚で張るようにします。これ以上広い間隔だとカワウに侵入されてしまったケースが報告されています。

テグスを張る際はスリット状(平行張り)で問題ありません。網目状にしたり、放射状にしているところもありますが、スリット状に張るだけで充分効果を望めます。

30m×30m池のコスト試算と工数

以下は900㎡の池でテグスを張った場合のコスト試算表です。

項目 数値 算出根拠 備考
池サイズ 30m × 30m 指定条件 面積900㎡
テグス間隔 0.3m 指定条件 スリット状(平行ライン)
ライン本数 101本 30m ÷ 0.3m = 100区間、端を含めて+1 端から端まで張る想定
テグス総延長 3,030m 30m × 101本 張り替え・結び代は別
テグス必要量(余長10%込み) 約3,333m 3,030m × 1.10 購入単位の都合で切り上げ
弾力ポール必要本数(両側) 202本 101点 × 2辺 各ライン端をポールに固定する想定

以上の前提を元に計算すると総コストは以下になります。

資材 仕様 数量 単価 小計 根拠
ナイロンテグス10号 1000m巻(クリア) 4巻(4,000m) 2,985円/巻 11,940円 1000m巻10号の価格例
弾力ポール(3.0m) ダンポールR マル55×3.0m 3束(100本×3=300本) 17,130円/100本 51,390円 100本単位の価格例
結束バンド(耐候) 300mm・100本入(ブラック) 5袋(500本) 699円/袋 3,495円 屋外用(耐候)価格例
合計 材料費(概算) 66,825円 購入単位切り上げ込み(テグス4,000m/ポール300本)

資材コストで7万程度かかる計算となります。次に人件費はどれくらいか試算したものが以下です。

工程 作業内容 数量・前提 作業時間(目安) 人数 工数(人時)
段取り 資材搬入、位置出し(30cmピッチのマーキング) 周囲120m、ライン101本位置 1.0時間 2人 2
ポール設置(片側) 弾力ポールを地面に差し込み/固定(2.5m高さ) 101本 2.0時間 2人 4
ポール設置(反対側) 同上 101本 2.0時間 2人 4
テグス張り(上流側→下流側) テグスを101本分張る(片端固定→引っ張り→反対側固定) 101本(1本あたり約30m) 4.0時間 2人 8
張力調整・再固定 たるみ調整、結束バンド追い締め、結び目の点検 101本 1.5時間 2人 3
仕上げ 危険表示(視認テープ等)/歩行動線の確保/片付け 1式 0.5時間 2人 1
合計 実作業時間合計(現場滞在時間) 2人作業想定 11.0時間 2人 22

時給2000円と仮定すると1池、資材コスト、人件費で11万程度で対策が可能になります。

コストで見るテグスを張るべきかどうかの判断

カワウに養殖している魚を食べられると、売上が減る前に「飼育コストが丸ごと無駄になる」という損失が発生します。問題は対策をしない場合どれくらい魚を食べられると損になるのか?です。

試算はニジマスを想定して以下の条件で行います。

  • 販売単価800円/kg
  • 原価率は75%。
  • ニジマス1匹200g、1匹あたりの原価は120円

30m×30mの池に、テグス10号を高さ2.5m、30cm間隔で設置する場合の初期費用は材料費と人件費を合わせて110,825円です。これを耐用年数3年で割ると、年間コストは約36,941円になります。

損益分岐は、この年間コストを1匹あたりの原価120円で割れば求まります。36,941円÷120円=約308匹。つまり、年間で308匹以上(約62kg以上)の被害が出ているなら、3年耐用前提ではテグス対策はコスト的に元が取れる計算になります。

カワウの魚食量から自分が管理する養殖場で何匹カワウを見かけるとこの水準になるのかおおよその目安として以下の表を参考にしてください。

羽数 合計摂食量(kg/日) 308匹(61.6kg)到達日数(日)
1 0.5 123.20
2 1.0 61.60
3 1.5 41.07
4 2.0 30.80
5 2.5 24.64
6 3.0 20.53
7 3.5 17.60
8 4.0 15.40
9 4.5 13.69
10 5.0 12.32
11 5.5 11.20
12 6.0 10.27
13 6.5 9.48
14 7.0 8.80
15 7.5 8.21
16 8.0 7.70
17 8.5 7.25
18 9.0 6.84
19 9.5 6.48
20 10.0 6.16

この表を参考にすると1~2羽程度ならテグスではなくエアガンやスリングショットで追い払いをした方がコスト的に軍配が上がりそうですが、5羽以上になってくると急速に損が広がっていくためテグスの導入を急いだほうが良いでしょう。

レーザーを使った追い払い

直接的に捕食を防ぐ物理策に加え、光でカワウを脅かして追い払う方法も広く取られています。これらは心理的嫌悪感を与える対策とも言えます。適切に実施すれば一定の効果がありますが、前述の通り慣れられる可能性もあるため、工夫と組み合わせがポイントです。

レーザー照射の実例と効果

強力な緑色レーザー光を夜間にカワウの群れやねぐらに照射すると、逃げることが知られています。カラスの追い払いにも用いられる手法で、カワウにも応用されています。

レーザーの効果と使い方:

  • 夜、木に止まっているカワウのねぐらに緑のレーザービームを揺らすと、鳥たちは光に驚きパッと飛び立ちます。光の正体が分からず脅威に感じるようです。
  • 日中でも曇天や薄暮であれば効果がありますが、基本は夜間向けです。昼間はレーザーが散乱してしまい視認性が低いため難しいです。
  • 静音かつ遠距離から追い払える利点があります。人が近づけない対岸の木にいるコロニーでも、レーザーならこちら岸から照射できます。音を出さないので人知れず作業でき、騒音トラブルもありません。

レーザー追い払いは比較的新しい方法ですが、山梨県のレーザーポインターを使った鉄塔のカワウの追い払いの報告書によると高い効果がありカワウが戻らなくなったとしています。この方法は営巣地で有効な方法で、昼間に食害をしに来るカワウに対しては有効ではない可能性があります。

忌避剤による対策

忌避剤とは、鳥が嫌う味や臭い成分を利用して近寄らせないようにする薬剤です。農作物の鳥害対策などで使われるものですが、カワウに対しても開発・応用が進められています。

鳥類が嫌うニオイの種類

鳥が嫌う匂いとして知られているものに、メチルアントラニレートという物質があります。これはブドウの香り成分ですが、高濃度では鳥の嗅覚や味覚を刺激して痛みを与えます。食品香料でもあり人にはさほど害がないため、米国では鳥害対策用忌避剤として登録されています。日本でもこの成分を利用した製品があります。

カワウ忌避バンド

プラスチック製のテープに忌避剤を練り込んだ「カワウ忌避バンド」はピンク色の帯で水面付近に張り巡らせ、触れたカワウに嫌な刺激と匂いを与えて撃退するものです。忌避成分は食品にも使えるメチルアントラニレートで、水中でも2~3ヶ月効果が持続するとうたわれています。長野県の千曲川漁協が大学と協力してこのバンドを導入する試みも始まっています。

ドローンを使った追い払い

近年、ドローン(無人航空機)を鳥獣被害対策に活用する試みが各地で行われています。カワウ対策でも、ドローンは空からの新たな追い払い手段として注目されています。

ドローン活用法:

  • 空中からの威嚇: ドローンをカワウの群れに接近飛行させて追い払う方法です。カワウにとって空から迫ってくる物体は天敵(猛禽類)のように感じるのか、かなり効果的に逃げます。湖面で採食中の群れにドローンを飛ばすと、一斉に逃げ去る映像も報告されています。
  • 巣への作戦: 繁殖期には、ドローンで巣に近づき特殊な処置を行うこともできます。長野県佐久地域の漁協では、ドローンに吊るしたドライアイスの塊をコロニーの巣へ投入し、卵を低温で死滅させる試みをしています。ドローンだからこそ人が登れない高木の巣にもアプローチでき、効率的に繁殖抑制が図れます。実際に約50個の卵が孵化しなくなったことを確認したとの報告があります。
  • 忌避剤散布: ドローンに散布装置を載せ、忌避剤をカワウのコロニー上空から噴霧することも考案されています。これにより巣作り自体を諦めさせたり、定着を防ぐ効果が期待されます。

ドローンの利点は、人が近づけない場所にもアプローチできることと、空から広範囲をカバーできることです。また、人的負担も比較的少なく、オペレーターが操作すれば短時間で作業できます。長野県佐久漁協では、春先の2ヶ月間ドローン駆除作業を行った結果、地元の伝統漁法(投網漁)が復活することを期待しているとのことです。

注意点としては、ドローン飛行には法律上の規制(飛行禁止区域や夜間飛行の制限など)や安全管理が必要なこと、そしてカワウがドローンに慣れる可能性もゼロではないことです。今のところ、カワウがドローンに反撃してくるような事例は聞きませんが、用心に越したことはありません。漁協や自治体主体で計画的に導入し、専門知識を持った操縦者が安全に運用することが大事です。

環境を整えて“カワウが居づらい場所”にする工夫

最後に、環境整備による予防策です。カワウに好まれる環境をあえて改変し、「ここは居心地が悪い」と思わせて寄り付かせない工夫も有効です。他の対策と並行しつつ、長期的な視点で環境づくりを考えます。

止まり木になる木の剪定方法

カワウは高い木の枝を好んで止まり木や営巣地にします。そこで、池や川沿いの木々を剪定し、カワウが止まりにくくする方法があります。

剪定のポイント:

  • 枝を減らす: 大きく横に張り出した枝や二股に分かれた枝を落としてしまいます。カワウがとまりたくても安定できる場所がなくなれば避けます。
  • 高さを下げる: 高木を思い切って高さ詰めする(上部を伐採する)ことで、カワウに見つかりにくい環境にします。あまり低い木は好まれません。
  • 茂みをすっきり: 辺りが見渡せる場所を好むため、視界を遮るような密生した低木や藪を残すのも一案です。ただし隠れてしまうと駆除しにくくなるジレンマもあります。

例えば、公園の池で周囲の木を剪定したところ、カワウが止まり木を失い居づらくなって移動した例があります。また小規模な島に繁殖コロニーができたケースでは、その島の樹木を意図的に間伐して、カワウが巣をかけられないようにしたこともあります。環境そのものをカワウ好みでなくしてしまう戦術です。

ただし、剪定や伐採には自然保護や景観上の配慮も必要です。極端にやりすぎると他の生物にも影響が出ますし、人為的すぎると周囲の理解も得にくい場合があります。そこで専門家の指導のもと計画的に実施することが望まれます。漁協と行政、森林管理者が連携し、最小限の木の変更で最大の効果を狙うことが重要です。

ねぐらを作らせないための管理方法

一度カワウのねぐら(塒)が形成されると、そこを拠点に広域の被害が続くため、そもそもねぐらを作らせないことが大切です。未然防止のための管理方法をいくつか挙げます。

  • 早期発見・早期対応: カワウが集まり始めた木や島を見つけたら、早めに追い払いや環境対策を施します。集団繁殖(コロニー)に発展する前なら、人が近づいて追い払うだけでも移動させられることがあります。繁殖活動に入って卵を産んでしまうと法律上駆除が難しくなるため、その前段階で動くのが肝要です。
  • テグスやテープの設置: ねぐらにされそうな木の上に、ビニールテープやテグス糸を蜘蛛の巣状に張り巡らせておくと、鳥が嫌がって止まらない場合があります。実際、岡山県では「テープ張り」でカワウのねぐらへの執着を断つ対策をしており、高い効果が出たケースが多いそうです。ねぐら形成前のカワウには特に有効とされます。
  • 夜間巡回と撹乱: 夕暮れ時から夜間にかけて、カワウが集まる場所を定期的に人や船で巡回し、ライトや音で落ち着かせないようにします。これを根気強く続けると、「ここは安心して寝られない」と悟って別の場所に行くことがあります。繁殖期以外なら鳥獣保護区でない限り合法的にできます。
  • コロニー除去: すでにコロニー化してしまった場合は、巣を撤去する方法もあります。繁殖期後(ヒナが巣立った後)に巣材を取り除き、次の繁殖に備えさせないようにします。ただしこれは一時しのぎで、根本はその場所自体を嫌がらせる工夫を並行しないと再営巣する可能性があります。

要は「寝心地の悪い環境」にすることです。ねぐらは一度安住の地だと認識されると、毎年戻ってくる習性があります。ですから最初が肝心で、「ここは落ち着かないから別を探そう」と思わせることが極めて大事です。そのためには人為的プレッシャーや環境整備で、カワウに見限らせるのが狙いです。

カワウは食べれるの?

駆除したカワウを食べて活用できないか?こう考える人もいるでしょう。結論から言えば、「食べられなくはないが、かなり癖があります」。カワウは魚ばかり食べているせいか、その肉には全体に酸化した魚油のようなツンとくる不快臭があります。この臭みは加熱するとさらに強まって、ちょっとやそっとの下処理では消せません。一度食べたことが有りますが、食べるために狩る事はもう無いなというレベルの味でした。

肉自体は野生の鳥のレバーっぽい味ですが、奥のほうに臭みがあります。ジビエ料理は当たりはずれがあるのですべてが不味いわけではないと思いますが、少なくとも私はもう一度食べたいと思いません。

また、カワウは生体濃縮でダイオキシンを溜め込んでる場合があるので場所によっては食べないほうが良いと思います。

まとめ

カワウはかつて激減した保護鳥から、一転して増えすぎた有害鳥となり、各地で漁業・環境被害をもたらしています。その賢さ、適応力、行動範囲の広さゆえに、対策は一筋縄ではいきませんでした。漁師・養殖関係者にとって、カワウ対策は頭の痛い問題ですが、本稿で見てきたように物理防除・追い払い・個体数調整など様々な手段があります。重要なのは、それらを組み合わせて総合的に実施することです。一つの方法だけではすぐ限界が来るため、「ネットで守り+音で追い+繁殖抑制で減らし+環境整備で寄せ付けない」というように、多角的な戦略を立てる必要があります。

また、カワウは広域を移動する鳥ですから、地域や関係機関の連携も欠かせません。近隣の漁協や行政と情報共有し、「こちらで追い払ったらあちらに行った」という場合は一緒に対策を講じるなど、大局的な管理が求められます。被害に悩む現場の一人として、本記事が少しでも対策検討の参考になれば幸いです。