猿対策に唐辛子は効くのか?

猿が最近畑に現れる。まだ被害が出ていないけど収穫時期になると食べられそう。そんな不安を抱えている方向けに、サルを撃退する方法をご紹介していますが、今回は猿を唐辛子で撃退するという事についての記事になります。唐辛子にはカプサイシンが含まれており、クマ撃退スプレーに使用されるなど、その刺激性はサルを撃退することのできるポテンシャルを秘めています。では、どうやってトウガラシを猿対策に使うのか、実際に作った唐辛子液の話も交えて説明していきます。

この記事でわかること
    • サルが唐辛子の辛味を嫌う仕組みと、匂いによる忌避との違い
    • 猿の嗅覚を人間や犬と比べた研究と、具体的な数値
    • 唐辛子を置く・吊るす・まく方法と、自作液を使った結果
    • タカノツメへの作付け変更と、植物で野菜を隠す方法
    • 木酢液・ハッカ油・オオカミの尿や、市販忌避剤の効果と費用
    • 唐辛子スプレーを検討する際の製品の違いと、使用時の注意

猿対策に唐辛子は効果があるのか?

そもそも猿に唐辛子が効くのか?農林水産省の『野生鳥獣被害防止マニュアル―実践編―』では、タカノツメはサルが好まない作物、トウガラシは比較的好まない作物として紹介されています。辛い唐辛子を食べるのを嫌がる性質は、被害を受けにくい作物を選ぶ際に利用できます。

猿は唐辛子を食べるのか?

唐辛子によっては辛味が少ないものがあり、そういった品種は猿も食べることがあります。唐辛子の辛さは品種によって違い、同じ品種でも栽培地や天候、収穫時期によって辛味成分の量が変わります。サルは辛味を嫌うので、辛くない品種はサルでも食べる可能性があります。

ニホンザルの採食を調べた「猿害を受けにくい農作物の選定」では、採食経験の豊富な飼育ザルにタカノツメを与えたところ、最初は口にして吐き出し、2回目は食べない行動が見られました。普通のトウガラシでは年齢によって食べ残し方が違い、タカノツメは幅広い年齢で多く残されていました。

食害を受けにくい作物を育てるなら、タカノツメが候補になるでしょう。何を植えるか決めるときは、苗の品種名も確認して辛みが多い品種である方がいいでしょう。

サルが嫌うのは唐辛子の辛味であって、匂いではない

サルは人間と同じように、カプサイシンに反応する受容体「TRPV1」を持っています。唐辛子の辛味成分であるカプサイシンがこの受容体に作用すると、痛みや灼熱感が生じます。猿対策で唐辛子を使う際に利用するのは、この辛味による刺激です。

唐辛子の辛味と猿

カプサイシンは気体になりにくいため、実を置いたり吊るしたりしても、辛味成分が芳香剤のように周囲へ広がることはありません。唐辛子は、口や鼻、目などに触れた成分の刺激を利用します。したがって、匂いだけでサルを撃退する事はできません。

粉やスプレーで刺激が生じる場合も、粉や液滴に含まれるカプサイシンが粘膜などに触れることで起こります。粉が空中に舞うことと、成分が気体になることは別の現象なのです。

余談ですが、鳥はカプサイシンの辛みをほとんど感じないため、唐辛子を与えても普通に食します。ニワトリのTRPV1を調べた研究では、ニワトリにも受容体はありますが、カプサイシンへの反応が弱いことが示されています。なので唐辛子スプレーをカラス撃退グッズに使用したりはできないのです。

猿の嗅覚はどれくらい鋭い?人間や犬との比較

猿の嗅覚は、調べる匂いによって人間と同程度だったり、人間より鋭かったりします。人には分からないほど薄い匂いを、猿が検出した研究もあります。人間や犬との比較を、実際に調べられた猿の種類と数値から見てみます。

猿の嗅覚は人間の何倍?

2013年の嗅覚研究では、人間12人とクモザル4頭について、6種類の匂いをどれくらい薄めても検出できるかを調べています。そのうち4種類は人間とクモザルの感度に統計的な差がなく、残る2種類は人間とクモザルがそれぞれ1種類ずつ上回りました。

具体的な例が、硫黄を含む匂い物質の「2,2-ジメチルチエタン」です。下の表の検出限界を比べると、この匂いでは、人間の平均より約11~110倍薄い濃度を検出したクモザルがいたことになります。

比較する項目 人間 クモザル
対象数 12人 4頭
2,2-ジメチルチエタンを検出できた希釈倍率 平均約2,700万倍 個体ごとに約3億~30億倍
この数値から求めた比較 人間の平均を基準に計算 約11~110倍薄い濃度まで検出

この倍率は、上記の匂いについて、人間の平均値とクモザル各個体の値を割った計算です。日本の畑へ来るニホンザルの測定値は、この研究にはありませんが約11~110倍人間より特定のにおいをかぎ分ける能力が高い可能性を示唆します。

猿の嗅覚は犬より弱い?

犬の方が鼻が利きそうですが、匂いによっては猿が犬に匹敵する結果もあります。クモザルとブタオザルの嗅覚を調べた2004年の研究では、それぞれ4頭に複数のカルボン酸の匂いを提示し、ほとんどの条件で1ppm未満、個体によっては1ppb未満の濃度まで検出しました。1ppmは100万分の1、1ppbは10億分の1の割合です。

研究者は犬やラットについて報告された過去の測定値とも比較し、一部の物質では猿が同等か、それより鋭い感度を示したと報告しています。野生生物は基本的に人間よりも五感が優れているので猿も例外ではないのでしょう。

猿は食べ物を選ぶときに匂いを使う?

食べ物を調べるときに匂いを嗅ぐ行動は、実験でも観察されています。2024年のバーバリーマカクの研究では、ピーナッツやポップコーンなどを透明な容器と不透明な容器に入れ、猿が中身をどう調べるかを観察しました。中身が見えない容器では、ほかの調べ方に先立って匂いを嗅ぐ行動が増えました。

この実験では、見えるかどうかによる「匂いを嗅ぐ確率」全体の差は明確ではありませんでしたが、嗅いだ後に中身へ手を伸ばすかどうかにも変化がありました。見た目だけで食べ物を判断しているのではなく、近づいて匂いも調べる行為により食べれるのかどうかを判断している事が読み取れます。

猿が嫌う匂いを置けば、畑に入らなくなる?

匂いを置くだけの対策には、あまり期待できません。農林水産省のマニュアルでは、木酢液などの匂いによる忌避効果はほとんどないとされています。野菜を食べられる畑では、匂いのする物を置いても侵入が続くことがあります。

臭いのきついハッカ油やニンニクの抽出液を使う方法はどうだろうと考える方もいるかもしれませんが、ほかの動物ならまだしも、サルには効果がありません。対策は食べ残した野菜や落ちた果実を片付け、作物へ入られる場所を直す方を優先するとよいでしょう。

唐辛子を置く・吊るす・まく方法で猿を防げる?

収穫した唐辛子を使う方法は、生の実、乾燥した実、粉、液体に分けられます。実を吊るす方法なら袋やひも、液体を使うなら抽出用の容器や散布道具が必要です。使う材料だけでなく、設置後にどのような作業が残るかも説明します。

生の唐辛子を置く方法は効くか?

生の唐辛子を畑の端や鉢の近くへ置く方法は、用意するものが少なく、採れた実をそのまま使える点では手軽です。しかし、畑への侵入を防ぐ方法としてはお勧めしません。地面に実を置いても、辛味成分が離れたサルの口や鼻へ届かないためです。

サルが実を口にして嫌がったとしても、その実だけ食べ残す可能性があります。周囲には食べられる作物があり、畑へ入る道もそのままです。実を並べるだけでほかの野菜まで守ろうとするのは難しいでしょう。

乾燥した唐辛子を吊るす方法はどうか?

乾燥した実をひもで束ねたり、網袋に入れたりして吊るす方法も、匂いによるサルよけには向きません。地面に直接置かずに済み、設置した場所が分かりやすく、まとまった状態で回収できる点は手軽です。乾燥させても、カプサイシンは実の中に残ります。

吊るした袋の近くをサルが通っても、実を触らず、口にもしなければ、辛味による刺激を利用できません。袋を何個も用意して畑を囲う手間をかけるなら、まずサルが入ってくる場所を見て、柵やネットの隙間を直した方がよいと思います。

唐辛子の粉をまく方法はどうか?

粉にすると細かい場所へ広げられるうえに揮発性も上がるので実をそのまま置くよりは効果が期待できます。ですが、猿がその上を通ったり、粉がある場所の10センチ程度の距離に鼻を近づければ嫌がる程度の効果で、それをもって防除するということは難しいでしょう。(サルがその上を通って手足についたカプサイシンを顔に塗ってしまったりする場合は別で、猿がその因果関係理解できればの話ですが)

また、地面にまいた粉は、土の表面を覆うように均等に残るものではありません。風、雨、水やり、耕作で置いた状態が変わります。

地面に置く別の対策用品には、猿よけスネーク5匹セットのような蛇の模型があります。こちらは見た目で警戒させる用品で、唐辛子の粉を撒くよりは効果があります。模型の近くで食害が続く場合は、位置や状態を見直し、侵入防止の対策も加える必要があります。

唐辛子を含む液体を散布する方法はどうなの?

液体にしたものは、粉を撒く方法よりも散布箇所を細かく指定できます。液体にしたものは揮発性が高くなり、サルの侵入経路に散布することにより猿の侵入を抑止できる可能性があります。揮発した成分で忌避するので、少し撒いた程度では意味がなく、サルの侵入経路の5平方メートル程度の広さに散布する必要があります。唐辛子ともみ殻や、木酢液を合わせた液体などは市販されているので試してみるのはよいのではないでしょうか。

しかしながら、揮発して効果が見込まれるということは揮発しきってしまえば効果がなくなるということなので、頻繁に撒く必要はあります。濃度にもよりますが、撒いた直後は人間でも近づきたくないほどむせます。それもそんなに長続きするものではないので、3日に一回程度撒く必要があると思います。

猿対策に使った自作唐辛子液の作り方と結果

私が試した唐辛子液は、唐辛子を刻んで焼酎に漬け込み、約1か月置いて作ったものです。使用時は3倍程度に薄めました。ここでは、そのときの材料と作り方、サルの出没がどうだったかを紹介します。

自作の唐辛子液の作り方

自作唐辛子液に用意するもの

焼酎はアルコール度数35度のホワイトリカーを使いました。1,800mL入りの容器から800mLを取り出し、残した1,000mLに唐辛子を漬け込む方法です。

  • 唐辛子:液にみっちり漬かる程度の量
  • ホワイトリカー:アルコール度数35度のもの1,000mL
  • 漬け込み用の容器:元の1,800mL容器を使用
  • ハサミ、ガーゼ、手袋、使用分を取り分ける容器

唐辛子の量は、容器に入れた状態を目安にしています。

唐辛子を刻んで漬け込み、使う分をこす

作業は、容器の容量を空け、唐辛子を刻んで漬け込み、置いてからこす順番です。手袋を着け、切った実や液が顔へ飛ばないよう、容器を安定した場所に置いて作業します。

  1. 1,800mL入りのホワイトリカーから800mLを取り出し、唐辛子を入れる空間を空けます。
  2. 唐辛子をハサミで細かく切り、残した1,000mLの液に漬かるよう容器へ入れます。
  3. ふたをしっかり閉め、仕込んだ日と中身を容器に書きます。
  4. 直射日光の当たらない涼しい場所に約1か月置きます。
  5. 使う分だけ取り出し、ガーゼでこして唐辛子のかすや種を取り除きます。

3倍程度に薄めて使った結果

実験では3倍程度に薄めて使用しましたが、サルはその間現れなかったので効果はあったのか?と思います。スリングライフルでの物理的なサルの追い払いも行っていたので、どっちが効いていたのかは判別できないのですが……。

ここでの3倍希釈は、私が試したときの使い方です。追い払いをしない条件で同じ結果になるか、何日間侵入を防げるかまでは、不明です。

唐辛子や香りの強い植物を植えると猿対策になる?

サルが頻繁に現れて作物を収穫できない畑では、サルに食べられにくいものを育てる方法があります。唐辛子を収穫物として栽培するほか、畑の外側に植えて内側の野菜を見えにくくする使い方も紹介されています。

タカノツメを食害されにくい作物として育てる

栽培する野菜を変更できる畑なら、タカノツメへの作付け変更が考えられます。農林水産省のマニュアルも、柵で囲えず人目が届きにくい農地では、サルなどが好まない作物を中心に育てる方法を紹介しています。トマトを育てていた畝をタカノツメに替える、といった使い方です。

ただ、唐辛子を大量に植えても、収穫した実の使い道がなければ困ります。家庭で使う量や乾燥保存する量、販売する場合の出荷先に合わせて作付けするとよいでしょう。自家用なら、毎年どれくらい料理に使うのかを考えておけば、必要以上に植えることも減らせます。

辛味の強い実は、収穫後の選別や刻む作業にも手袋が必要です。収穫したものを乾燥させて保存するなら、干す場所や保存容器も用意します。販売を考えている場合は、求められる品種や、生の実と乾燥品のどちらを出荷するのかを決めてから、栽培面積を増やす方がよいでしょう。

ショウガ・ミント・バジルはサルが嫌う?

ショウガ、ミント、バジルも、同じマニュアルではサルが比較的好まない作物に挙げられています。収穫して料理などに使う予定があるなら、作付けの候補になります。香りが強い植物を植えて、周囲の野菜を匂いで守る使い方には、あまり期待できません。

作付けを替える場合は、何株か試した区画で、サルが実際に食べるかを見てから面積を増やす方がよいと思います。食べられなかった作物でも、収穫や手入れが続けられなければ畑は荒れてしまいます。自分が使う作物、出荷できる作物の中から選ぶと、収穫後も無駄になりにくいでしょう。

シソやニンニクを植える方法は?

シソは、廿日市市のサル対策資料で、サルが嫌がる植物の一つとして紹介されています。シソを料理に使うために育てるのはよいですが、匂いだけで畑を囲う目的にはお勧めしません。

ニンニクは農林水産省のマニュアルではイノシシが好まない作物に挙げられています。一方、先ほど紹介した滋賀県の現地調査では、ニンニクもサルの被害が認められた作物に含まれています。サルに絶対食べられない作物として植えることは避け、周辺の畑で被害が出ていないかも見ておくとよいでしょう。

守りたい野菜の外側へ植えて目隠しにする

収穫する野菜を変えたくない場合には、外側へ別の植物を植え、作物を見えにくくする方法があります。廿日市市は、柵と合わせて、サルが好まない野菜や背の高い花を、守りたい野菜の周囲へ植える方法を紹介しています。食べ物を外から見つけにくくする植え方です。

植物を使ったサル対策の目隠し

目隠しにするなら、外側から野菜が見える高さや隙間を残さないように植えます。背の高いトウモロコシを低い唐辛子で隠すのは難しいですし、数株を離して植えただけでは間から野菜が見えてしまいます。外周を植栽に使う分、ほかの野菜を育てる面積も減るので、狭い菜園では通路や収穫作業の場所も残しておくとよいでしょう。

目隠しの横や下に、サルが歩いて入れる場所が残る場合は、その入口も塞ぐ必要があります。野菜を収穫する通路の扱いや、ネット・金網・電気柵の使い方は、畑・家庭菜園のサル対策でも説明しています。

目隠しの植物は、野菜の収穫期まで残す

守りたい野菜が実る時期に、外側の植物も十分に育っている必要があります。トマトが実っているのに外側がまだ苗の大きさでは隠せませんし、トマトの収穫が続いている間に外側の植物を抜けば、隠れていた実が見えるようになります。目隠しとして使う植物は、内側の野菜の収穫が終わるまで残すとよいでしょう。

水やりや追肥、刈り込みなど、植物を育てる作業も増えます。また、畑の外側にある藪まで放置するとサルの隠れ場所になるので、目隠し用の植栽とは別に、周囲の藪や伸びた草は刈り払っておきます。目隠しを残す範囲と、見通しをよくするために刈る範囲を決めておくと、手入れの際に迷いません。

木酢液は猿対策に効く?まく・吊るす方法と効果

農林水産省のマニュアルでは、木酢液などをまいたり、染み込ませた布を設置したりする方法について、匂いだけでは忌避効果がほとんどないと説明しているため、木酢液の匂いだけで畑を守る方法は、お勧めしません。

木酢液とは、どんな液体なのか?

木酢液は、木材を炭にするときに出る煙を冷やして得られる液体です。林野庁の説明では、酢酸など200種類以上の成分を含むとされています。煙を思わせる独特の匂いがあり、唐辛子の実を吊るす方法と比べると、人にも匂いを感じやすい材料です。

林野庁は、品質や成分のばらつきを減らすため、関係団体が木酢液などの規格を統一し、認証制度を運用していることも紹介しています。

木酢液はサルに効かないなら何に効くの?

木酢液は、ナメクジを寄せ付けない目的で効果が報告されています。長野県林業総合センターの研究では、原木栽培のきのこをナメクジの食害から守るために試験が行われ、約2週間の忌避効果が確認されています。

犬や猫のフン害対策にも使われています。宇治市の案内では、フンを片付けて尿を洗い流した後、薄めた木酢液を猫の通り道などへまく方法や、液を入れた容器を近くに置く方法が紹介されています。雨で流れたり、匂いが弱くなったりすれば、まき直しや液の交換が必要です。

また、養豚・養鶏場などの畜舎や、家庭の生ごみの消臭にも使われます。日本木酢液協会は、有機酸などによる中和作用と、燻したような匂いで悪臭を目立たなくする作用を説明しています。木酢液自体の匂いを使うので、無臭にしたい場所にはあまり向かないと思います。

木酢液と唐辛子を混ぜた市販品はどうか?

木酢液に木タールやカプサイシンなどを配合した市販品には、粘土状にして地面へ置く製品もあります。液体を自分で混ぜて散布する方法とは、成分の配合も、置いた後の残り方も違います。

例えば、次に紹介する「忌避の秘香」は、食用農産物へ直接散布する製品ではありません。野菜に液を付ければ食べなくなると考えて、木酢液や唐辛子液を葉や実にかける使い方は避けた方がよいでしょう。使用するなら、製品に指定された場所と設置方法を守り、被害が減るかどうかを見ながら使います。

猿用の市販忌避剤は、成分・使い方・費用でどう違う?

サルを対象に含む製品には、噴射式の「さるいちばん」、粘土状の「忌避の秘香」、液体を容器に入れる「ウルフピー」があります。ここでは各社が案内する成分と使い方を比較します。

さるいちばん・忌避の秘香・ウルフピーの比較

置いたまま使えるのは忌避の秘香やウルフピーで、さるいちばんは使用時に噴射する製品です。畑へ通える回数や、補充できる量に合わせて比較するとよいでしょう。下の表は製品仕様をまとめたものです。

製品・販売元 主な成分・形状 使い方
さるいちばん(スミス通商) カプサイシン、ショウガ、籾酢を配合した噴射式スプレー。90mL入り 容器を立てて噴射する。
忌避の秘香(伝農アシスト) 木酢液、木タール、カプサイシンなどを配合した粘土状の製品。10kg入り 地面に配置するか、メッシュ袋に入れて吊るす。食用農産物への散布は不可
ウルフピー(取扱会社:カナエ) オオカミの尿を使用した液体 小分け容器に入れて吊るす。液が減ったら容器に補充する

オオカミの尿を使った「ウルフピー」は猿に効く?

カナエは、オオカミの存在を感じさせて動物を近づきにくくする製品として、サルも対象に挙げています。同社も効果には個体差があり、完全な動物よけは保証できないと案内しています。最初から畑全体を囲う量を買うより、使う場所を絞って様子を見る方がよいと思います。

置き型・吊り下げ型・噴射式では、使う場所が違う

忌避の秘香は、野菜を栽培しているすぐ近くではなく、獣が来る山裾などの境界側へ置くよう販売元が案内しています。畑の近くへ設置する場合には、メッシュ袋に入れて吊るす方法もあります。葉や実にまいて食害を防ぐ使い方はできません。

ウルフピーは小分け容器を吊るすため、液だけでなく容器と固定する場所も必要です。さるいちばんは使用時に噴射する製品で、畑への散布量や持続期間は公式ページに示されていません。留守中の畑へ設置する目的なら、配置や吊り下げの方法が案内されている製品から検討することになります。

必要量は、設置する場所の長さから計算する

約6m間隔で吊るすウルフピーなら、閉じた外周60mを囲むと仮定して10個の容器が必要です。カナエは侵入されやすい箇所では間隔を狭くする使い方も案内しているので、その場所に増やす分は別に数えます。畑の面積が同じでも、細長い畑と正方形に近い畑では必要になる個数が変わることに注意が必要です。

忌避の秘香を同じ外周60mへ約5m間隔で置く計算なら12か所です。販売元の数量計算にある「1か所100gと仮定」を使うと、1回分は約1.2kgになります。100gは必要量を説明するための仮定で、すべての場所に指定された使用量ではありません。実際に置く区間は、山裾などの設置条件に合わせて決めます。

補充と交換を含めて費用を比べる

ウルフピーは容器を再利用して液を補充します。専用容器では約1か月で蒸発する目安が示されているため、数か月使うなら補充用の液も必要です。容器を増やせば補充する量と回る箇所も増えるので、初回の容器代だけでなく、収穫までに買い足す液の費用も見込んでおくとよいでしょう。

忌避の秘香は、雨による流出や紫外線による劣化があれば、再設置や補充が必要になります。公式ページの仕様欄にある約1~2か月は、匂いが出る期間の目安です。サルの侵入をその期間ずっと防げるという保証はありません。設置した薬剤の状態と食害の有無を見ながら補充します。

吊り下げる場所がなければ、支柱やひも、袋の用意も必要です。散布用の製品なら、1回に使う量とまき直す回数、自作液なら材料の加工や容器の準備も費用と作業に含めます。買った薬剤が余っていても、毎週畑へ行って補充できないなら、設置場所を増やしすぎない方がよいでしょう。

黒コショウやほかの動物用の忌避成分は、猿にも使える?

唐辛子以外にも、黒コショウ油、ニンニク油、硫黄、捕食者の尿などを使う忌避剤があります。米国農務省APHISの忌避剤資料にも、こうした成分が掲載されています。鳥やシカ、ウサギなどを対象とした用途が多く、サル用として流用はできないと思われます。

黒コショウ油・ピペリンと、ほかの忌避成分

米国EPAの登録資料には、黒コショウ油、ピペリン、カプサイシン類を組み合わせた粒状の動物忌避剤が載っています。対象には犬猫やアライグマなどが挙がっていますが、サルへの使用試験はないので有効出るかどうかは不明です。

成分 資料で紹介されている用途
黒コショウ油・ピペリン カプサイシン類との配合例がある。EPA資料の当該製品は犬猫などが対象
ニンニク油・硫黄 APHISの野生動物用忌避成分の資料に掲載
コヨーテ尿・キツネ尿 捕食者の尿を使う忌避成分として掲載
デナトニウム安息香酸塩 苦味などを利用し、森林の樹木をシカの被害から守る用途
メチルアントラニレート・アントラキノン 鳥類への忌避用途を中心に紹介される成分

ナフタリンなどの防虫剤を、猿よけに使わない

衣類用の防虫剤を畑や庭へばらまく使い方は避けた方がよいでしょう。米国農薬情報センターは、防虫剤を表示外の動物よけに使わないよう案内しています。人や動物への曝露や環境への影響があり、強い匂いを出すためだけに流用するのは勧められません。

唐辛子スプレーは猿に効く?効果・選び方・使用時の注意

カプサイシンの刺激は、サルにも作用します。もしサルに囲まれた場合に備えて防犯スプレーを携帯するというのもさる被害が頻発する場所では良いと思います。

サル対策と唐辛子スプレー

人を怖がらず近づいてくる猿に、どう対応する?

人に慣れたサルが、食べ物を求めて近づいてくる場合があります。熱海市の遭遇時の案内でも、餌付けにより人を怖がらなくなり、食べ物を奪おうとするおそれがあるとされています。食べ物を外へ置かず、戸や窓を閉めておくことが、家の近くでできる対策です。

接近されたときは、目を合わせず、背中を見せないようゆっくり離れます。スプレーを持っていても、噴射するために自分から距離を詰めるのは避けた方がよいでしょう。退避できる建物や車があるなら、そこへ移動し、人のいる方へサルを追い込まないようにします。

畑で計画的に行う追い払いと、目前のサルから身を守る場面では、人が動ける範囲も周囲の状況も違います。通学路や住宅の近くで威嚇が続く場合は、個人で追い回すより、自治体の鳥獣対策窓口へ場所と出没時刻を伝えるとよいでしょう。人が襲われそうな切迫した状況では、警察への通報も必要です。

熊撃退スプレーと防犯用スプレーは何が違う?

熊撃退用には、広い範囲へ霧を噴射する製品があります。対人用の防犯スプレーには、細い液柱を飛ばす製品もあり、同じ唐辛子由来の成分を使っていても、噴射される形や届く範囲が異なります。

霧状に広がる製品は、周囲への飛散にも気を配る必要があります。小さな容器を片手で持てる製品でも、噴射距離や使用できる時間は製品ごとに違います。容量だけで選ばず、噴射方式、距離、時間、使用対象が表示されているかを見ます。熊撃退スプレーと防犯用スプレーの違いは別の記事でも説明しています。

スプレーを使った後は、その場を離れる

猿の場合、スプレーを吹き付けても熊のように怒って攻撃してくることはなく、痛みで逃走しますが、そのサルが斥候の役目をしているサルだったり、群れの若い、まだ群れの中での地位が低いサルだった場合、更に強いサルが出てくる場合もありますので、速やかにその場を離れるようにしましょう。

唐辛子や忌避剤を使っても、猿が戻ってくる場合は?

安く大量に設置できても食害が続くなら、買い足す前に、サルが実際に入っている場所を調べます。柵の下の隙間や破れ、近くの木から飛び込まれる箇所があると、薬剤を増やしても作物へ手が届きます。サル対策が効かないときの見直し方で、侵入経路や不在時間、アラーム装置の作動についても説明しています。

雨の後と、被害が出た場所を確認する

液が流れたり容器が倒れたりしていないかを見たうえで、食べられた畝と入口を確かめます。薬剤を置いた反対側から入っている場合や、開けたままの通路を使われている場合は、その場所を先に直します。電気柵がある畑では、草との接触、破損、通電状態も点検します。

収穫せずに残した野菜、落ちた果実、畑の端へ捨てた残さも片付けます。出没時刻が分かる場合は、周辺の農家や自治体と共有しておくとよいでしょう。人がいない時間にも収穫物を食べられる状態を減らすことが、忌避剤の追加より先にできる作業です。

参考資料

唐辛子の性質とサルの採食は公的資料と研究、人間や犬との嗅覚比較は対象種を明記した研究を参照しました。市販品の仕様は各社の公式説明に基づき、自作唐辛子液の使用結果は本文に記載した筆者の経験です。

山村 直也
この記事の著者
山村 直也
所属
株式会社守護テック / Slingshotrifle.jp
専門領域
スリングショット用品の開発・販売、害獣対策用品の評価、狩猟および有害鳥獣対策の実務、熊撃退スプレーを含む野外安全装備の評価

Slingshotrifle.jpを運営し、スリングショット用品の開発・販売、製品評価、使用方法の情報発信を行っています。狩猟免許を保有し、猟友会にも所属。狩猟や有害鳥獣対策の実務に関わる立場から、スリングショットの選び方、ゴムの特性、安全な使用方法、野外での備え方を解説しています。また、害獣対策用品や熊撃退スプレーの開発・評価にも携わり、農作物被害対策や有害鳥獣対策に関する情報発信も行っています。北海道での自然行動経験やヒグマ遭遇経験を踏まえ、実用性を重視した情報提供を心がけています。

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