Slingshotrifle

自由猟具のスリングショットでの狩猟、免許不要の自由猟法のすゝめ

スリングショット 狩猟 鴨

一般的に狩猟を始めるのに免許が必要と考えられていますが、実は鳥獣保護法には免許や許可を取らずとも鳥獣を捕獲しても良いケースが有ると明記されています。それらの猟法は自由猟法と呼ばれ、かなりニッチですが実際に狩猟を行っている方もいます。その際に使用する道具は自由猟具のスリングショットやスリングライフルというゴムを動力とした物が一般的ですが、このページではどのように自由猟法を始めればよいのか、どんな事に気を付ければよいのか、何を準備すれば良いのか等、自由猟法を始めるにあたって必要な知識、スリングショットでの鴨猟に必要な技術をスリングショット猟5年目の筆者が説明します。

鳥獣保護法での自由猟法、自由猟具の扱い

冒頭で”自由猟法”と説明しましたが、この言葉は鳥獣保護法で定義されている言葉ではなく、誰かがそのように呼ぶようになって定着した言葉です。この自由猟法とは何なのか、自由猟法の法的根拠を見てみましょう。

(狩猟鳥獣の捕獲等)

第十一条 次に掲げる場合には、第九条第一項の規定にかかわらず、第二十八条第一項に規定する鳥獣保護区、第三十四条第一項に規定する休猟区(第十四条第一項の規定により指定された区域がある場合は、その区域を除く。)その他生態系の保護又は住民の安全の確保若しくは静穏の保持が特に必要な区域として環境省令で定める区域以外の区域(以下「狩猟可能区域」という。)において、狩猟期間(次項の規定により限定されている場合はその期間とし、第十四条第二項の規定により延長されている場合はその期間とする。)内に限り、環境大臣又は都道府県知事の許可を受けないで、狩猟鳥獣(第十四条第一項の規定により指定された区域においてはその区域に係る第二種特定鳥獣に限り、同条第二項の規定により延長された期間においてはその延長の期間に係る第二種特定鳥獣に限る。)の捕獲等をすることができる。

一 次条、第十四条、第十五条から第十七条まで及び次章第一節から第三節までの規定に従って狩猟をするとき。
二 次条、第十四条、第十五条から第十七条まで、第三十六条及び第三十七条の規定に従って、次に掲げる狩猟鳥獣の捕獲等をするとき。
イ 法定猟法以外の猟法による狩猟鳥獣の捕獲等
ロ 垣、柵その他これに類するもので囲まれた住宅の敷地内において銃器を使用しないでする狩猟鳥獣の捕獲等
2 環境大臣は、狩猟鳥獣(鳥類(狩猟鳥獣のうちの鳥類に限る。)のひなを含む。以下「対象狩猟鳥獣」という。)の保護を図るため必要があると認めるときは、狩猟期間の範囲内においてその捕獲等をする期間を限定することができる。
3 第三条第三項の規定は、前項の規定による狩猟期間の限定について準用する。

何を言っているのか分かりづらいですが、簡単に要約すると「鳥獣保護法の範囲内で狩猟期間内に、法定猟具以外で禁止猟法にあたらない方法で、狩猟可能な地域で狩猟鳥獣を捕獲する場合と、銃以外の法定猟具は柵や垣で囲われた住宅地でなら許可を取らずに使用しても良いですよ」と書かれています。

ここでいう法定猟具とは銃、罠、網の事を指し、禁止猟法とは以下を指します。

  • 釣り針、とりもちを使用する方法
  • 矢を使用する方法。(スリングショットライフルでは球形の弾以外を使用すると、矢の使用とみなされる可能性が有るので球以外は使用しない方が良いでしょう。)
  • キジ笛を使用する行為
  • テープレコーダーを使用してヤマドリ、キジをおびき出す行為
  • 犬にかみつかせる行為
  • 爆発物、劇薬、毒薬、据え銃、落とし穴を使用する行為

つまり、自由猟法とは上記の法定猟具、禁止猟法以外の方法で鳥獣を捕獲する方法の事を指します。また、法定猟具、禁止猟法以外の道具のことを一般的に自由猟具と言います。

自由猟具を使用した狩猟者登録と狩猟税

狩猟をおこおなうためには、狩猟者登録と、狩猟税の支払いが必要になります。狩猟者登録に関しては、鳥獣保護法の第55条に以下のように明記されています。

第五十五条 狩猟をしようとする者は、狩猟をしようとする区域を管轄する都道府県知事(以下この節において「登録都道府県知事」という。)の登録を受けなければならない。ただし、第九条第一項の許可を受けてする場合及び第十一条第一項第二号(同号イに係る部分を除く。)に掲げる場合は、この限りでない。

自由猟は前述の鳥獣保護法の「第十一条二号 イ」で定められている“法定猟法以外の猟法による狩猟鳥獣の捕獲等”であり、鳥獣保護法が定義するところの狩猟ではないの狩猟者登録の必要はありません。

また、狩猟税に関しては地方税法によって以下のように定義されています。

(狩猟税)
第七百条の五十一 道府県は、鳥獣の保護及び狩猟に関する行政の実施に要する費用に充てるため、当該道府県知事の狩猟者の登録を受ける者に対し、狩猟税を課するものとする。

つまり、狩猟者登録を行う必要がない“法定猟法以外の猟法による狩猟鳥獣の捕獲等”では狩猟税の支払い義務も生じません。

自由猟法で使える自由猟具

自由猟法で使用できる道具は上述の法定猟具、禁止猟法以外の猟法ですから範囲はかなり広くなります。素手での捕獲はもちろん、槍や投石、ナイフを投げるといった方法でも法的には問題ありません。ただ、野生の生物は警戒心が強く、動きも機敏です。実際にこれらの方法で鳥獣を捕獲するのはかなり難しいでしょう。では実際に自由猟法ではどのような道具が使用されているのか見て行きましょう。

スリングショット

 

スリングショット

スリングショットは所謂ゴムパチンコの事で、ゴムを引っ張り、ゴムが戻る力で小石や鉄球等の弾を飛ばす道具です。スリングショットは、構造が単純であるため壊れにくく、携帯性も良い上にかなり高い威力を出すことができるため、鳩の駆除猿撃退グッズとして広く使われています。日本で有名なのはバーネットやサンダースファルコンといったスリングショットで、威力は使用するゴム、球によりますが、5ジュール程度は出ます。鴨を捕獲するのに8ジュールの運動エネルギーが必要とされているので、これらのスリングショットではカモを狩るのは難しいでしょう。また、丸ゴムは引きが重いためこれらのスリングショットを扱うには相当の練習量と、ゴムをしっかり引く筋力が必要となります。

当店で販売している狩猟用スリングショットは平ゴム仕様であるため引きが軽く、照準器と水平器を搭載しているため、初心者でも精度が出しやすいため、筋力に自信がない初心者の方にお勧めしております。

一般的に10メートル先の5センチの的にコンスタントに当てれるようになるには30~80時間の練習が必要とされており、いかに狩猟用スリングショットを使用してもスリングショットで狩猟を行うにはある程度の練習が必要になるというのは事実です。

スリングショットの種類

スリングショットには使用できるゴムの種類や、照準器付きの物、アームレストが付いたものと様々な種類が有り、どれが良いのか初心者の方にはには選び辛いかもしれません。初めてスリングショットを購入する方は、以下のポイントを押さえたものが良いでしょう。

  • アームレストが付いたもの

アームレストが付いている物と付いていない物を実際に引いて比べてみると、アームレスト付きの物の方が手首の負担が少なく、ゴムを引いた状態での安定性が段違いに高いのが分かります。初心者で筋力に自信が無い方の中で丸ゴムを使用したいという方は、アームレストが付いた物を購入する方が良いでしょう。

  • 平ゴムが使用できる物

スリングショットで使用できるゴムは丸ゴムと平ゴムの2種類があります。それぞれのメリット、デメリットを見て行きましょう。

メリットデメリット
丸ゴム耐久性が高いゴムの引きが固い
平ゴム引きが軽い、速度が速い耐久性が低い

丸ゴムの長所は耐久性が高いという点のみで、スリングショット猟を行う場合、耐久性よりも引きやすさと、弾の速度が速い平ゴムを使用する方が断然お勧めです。丸ゴムの方が引きづらいので威力が強いと思われるかもしれませんが、実際の速度は平ゴムの方が速く、丸ゴムの最高速度は8㎜のスチール弾で75m/秒に対して、平ゴムは100m/秒を超えることも可能です(速度を上げるにはテーパー加工が必要で、ここまで速度を上げると5,6発撃っただけでゴムが切れます。また速度を出すためにバタフライドローという特殊なゴムの引き方をする必要があるので、的に当てるのは相当量の練習が必要です。)

平ゴムの耐久性も市販されている物や、自作でセラバンドを使用して作ったものであれば150発程度は問題なく使えます。自作をされる方は、こちらのサイトで長さ、テーパ具合などを計算すると便利です。http://www.slingshotchannel.com/band_calc.html。(英語のページです)スリングショットのゴムの選び方の記事で、自身の撃ち方、玉の重さによってのゴム長さ、厚さの最適化方法について説明しているので参考にしてみてください。すでに最適化されているゴムを買いという方はスリングショット用ゴムのページでお買い求めいただけます。

平ゴムを引くのに必要な力は丸ゴムの7~6割なので平ゴムを使用するのであればアームレストが無いものでも問題ありません。どんなスリングショットを選べばいいかわからない、、、という方向けにスリングショットの威力、スリングショットはどんなものがいいのかスリングショットの威力ランキングページを作成しましたので、スリングショット選びの参考にしてみてください。スリングショットの通販店比較の記事でスリングショット通販サイトでの様々なスリングショットの価格比較、特徴を紹介しているので、そちらの記事もぜひご覧ください。

スリングライフル

スリングライフルとは銃型のスリングショットの事を指し、スコープが搭載可能な点と、ゴムを引いた状態で保持できる点が従来のスリングショットと大きく異なります。これらの利点によって練習をせずに高い精度と、スリングショットでは出せない高威力を出すことが可能となりました。法定猟具と比べ、自由猟法でネックになるのが精度と威力の問題ですが、スリングライフルは自由猟具の中では最高の精度と威力を出すことが可能です。自由猟法をこれから始めようと考えている方へは、この次世代型のスリングショットを使用するのをお勧めします。

スリングショットライフル販売店

スリングライフルは自由猟法を行っている人口が少ないため一般的に流通している物ではなく、店頭で販売している販売店というものは存在しません。購入は通販の一択となります。また、販売しているサイトも数えるほどしかないのが現状です。それでは、どこで購入できるのか、販売店を見て行きましょう。

Gomrifle.com
gomrifle.com
引用:gomrifle.com

こちらのサイトではハンドメイドのハイエンドなスリングライフルを扱っています。ハンドメイドなだけに価格帯が中古の猟銃と遜色ないレベルですが、見た目は美しく、観賞用、趣味で的当てを楽しむには良さそうなスリングライフルを販売しています。

Slingshotrifle.jp

スリングショットライフル

こちらは弊社のサイトとなります。販売しているのは狩猟用スリングライフルで、威力、精度共に実猟で十分に使用できるレベルとなっております。実際に実猟でテストを行い開発した製品ですので、害獣の駆除、自由猟法を行おうと考えている方にはこちらがお勧めです。

FNクロスボウ

クロスボウを扱っているサイトで、スリングライフルも扱っているようです。実際の購入者の評価は”面取りが甘く粗悪品?”なのかもと疑惑の声が出ているようで品質はあまり良くないのようです。ただ命中精度は良いようで、実猟での使用は問題ない範囲なのかもしれません。

FNクロスボウ コメント2

FNクロスボウ コメント

自由猟法 鷹

古来より鷹を使用しての狩りは日本で行われてきました。現在でも鷹を使用して狩猟を行っても法律的に全く問題はありません。鷹を狩猟に使用されている方はごくごくわずかだと思われます。その理由に鷹を使役し狩猟が出来るようになるまで鷹を育成する時間と、鷹とコミュニケーションをとるための技術、鷹を飼育する設備が必要になる点です。鷹を使っての狩りはロマンが有りますが、きっかけと環境が無いと難しいのが現状ではないでしょうか。

素手/投石

素手での狩猟は非常に難易度が高いです。正攻法で鳥獣に素手が届く範囲まで近づくのはまず無理でしょう。素手での捕獲が可能な方法は鳥が営巣している場所を突き止め夜間に忍び寄って捕獲する方法以外無いのではないでしょうか。

投石は素手よりも確率は高いと思いますが、かなりのコントロールが必要なので、一般の方には難しい方法だと思われます。

おすすめの自由猟具は?

自由猟法で使用できる自由猟具を紹介しましたが、現実的に使えそうな自由猟具はスリングショットか、スリングライフルの二択ではないでしょうか。お勧めは精度、威力共に自由猟具の中では最強のスリングライフルを使用する方法です。スリングショットも練習量さえ確保できる方なら問題ないですが、大抵の方は精度を実猟で使えるほどまで高める前に挫折するでしょう。ただ、スリングライフルにもデメリットは有ります。

  • 銃型なので、人目に付くような場所での狩猟はトラブルに発展する恐れがある

これは狩猟全般に言えることですが、狩猟に関して世間一般の方は寛容ではありません。たいていの人は”何だか怖そう”、”野蛮”というイメージを持っています。従って、狩猟は必ず人目につかないような場所で行わなければなりません。

スリングショット(パチンコ)猟の下準備

道具も決まり、いざ出猟と考えているかもしれませんが、ちょっと待ってください。

まだ準備をする事があります。

ハンターマップ

行こうとしている場所は狩猟を行っても問題ない場所ですか?最新のハンターマップで確認をしましたか?ハンターマップは管轄の市の担当部署(農林課)で入手が可能です。後述のスリングショットを利用しての狩猟の可否確認の際に、ハンターマップも欲しいと説明をすれば渡して貰えます。また、ハンターマップの携帯は狩猟を実際に行うエリアが、狩猟可能かどうかを他者に説明する際に必要なので携帯をするようにしてください。

スリングショットを使用しての狩猟の可否確認

鳥獣保護法にスリングショットでの鳥獣の捕獲は鳥獣保護法の範囲内で可能と明記されておりますが、一般的にスリングショットでの狩猟は認知されていません。狩猟免許を持っている大多数の人でさえ、パチンコ猟が合法であるとの認識を持っていないのが現状です。よって、万が一の職務質問、他ハンター、近隣住民の方からの問いかけに対応するために、狩猟を行おうとしているエリアを管轄している支庁に文面での確認を行うことをお勧めします。大抵、農林課が狩猟関係の窓口になっているので、そちらにメールで質問を送るのが良いでしょう。その返答をスマホに保存して携帯しておけば、そういったトラブルに巻き込まれても自身の正当性を説明できるため安心です。

問い合わせの際に担当者がスムーズに確認、回答ができるよう、他行政の公式回答のページを参考に送ると良いかも知れません。

静岡県湖西市のページにてスリングショットでの狩猟に関して回答が載っています。

鳥獣保護法

自由猟法が認められるのは鳥獣保護法の範囲内です。狩猟鳥獣と非狩猟鳥獣の区別は必ずつくようにしておかなければなりません。また、数にも制限があったり、カモ類などは場所によって猟期が異なる場合があったりと出猟前に事前に確認が必要です。自由猟法に関わる法律の知識はこちらの鳥獣保護法のページで学んでください。また、万が一の職務質問、近隣住民による問いかけが有った場合に法的に問題ない事を説明するため鳥獣保護法十一条の理解と鳥獣保護法のコピーを携帯しておくことがお勧めです。

狩猟期間

狩猟免許が無いからと言っていつでも鳥獣を狩って良い訳ではありません。鳥獣保護法では狩猟期間が設けられており、その期間内でのみ鳥獣の捕獲が許されています。

場所猟期
北海道10月1日~1月31日
北海道以外11月15日~2月15日
青森、秋田、山形でのカモ猟11月1日~1月31日

場所によってだけでなく、獲物によっても狩猟期間が異なる場合があるので、必ず狩猟を行う県での狩猟期間を確認してください。

狩猟可能な鳥獣

現在狩猟対象となっている鳥獣類は鳥類28種、獣類20種です。これ以外の鳥獣を許可なく捕獲、殺傷することは固く禁じられています。また、害獣駆除で獣を狩る場合は特別な許可が必要となっており、法定猟具では無いスリングショットに対しては駆除許可が下りないでしょう。狩猟鳥獣一覧に関してはこちらの狩猟鳥獣一覧ページをご確認ください。

こちらのページにたどり着いた方の中には害獣対策でスリングショットを使用しようと考えている方も多いでしょう。カラスは狩猟鳥獣に含まれており、合法的に駆除することが可能です。カラスへの対策方法はカラスにレーザーポインターは効くのか?の記事でまとめております。是非一度ご確認ください。

スリングショットで使用する弾

スリングショット、スリングライフルで使用する弾はスチール製の物を使用してください。鉛玉も販売されていますが、水鳥が誤って飲み込んで鉛中毒になることが有るため使用をしないようにしてください。北海道では銃猟で使用する鉛玉を所持することも禁止されており、その他の都道府県でも場所によって規制されています。スリングショットは銃ではないので鉛玉の使用は規制されていませんが、生き物を無駄に殺すことはハンターとして避けなければならないので使用しないようにしてください。

また、先のとがった矢のような形状をした物を打ち出すことのできるスリングショットも有りますが、弓矢の使用は禁止猟法に当たり、球状以外の物だと弓矢と解釈される恐れがあるので球以外を使用するのは避けたほうが良いでしょう。

軽犯罪法対策

スリングショットは武器に分類されるため、正当な理由なく携帯していた場合軽犯罪法に触れます。また、正当な理由が合ってもすぐに使える状態で持ち歩くことも違法になりますので、スリングショットを携帯するときは必ず、ケースやカバンに入れすぐには使えない状態で携帯するようにしましょう。また、上述のハンターマップ、行政からの狩猟可否確認メール、鳥獣保護法のコピーはスリングショットを携帯する正当な理由を証明するために必要になるので、忘れずに持ち歩くようにしましょう。

スリングショット猟で保険は入れるの?

スリングショット猟で保険に入る必要はありませんが、万が一に備えて保険に入っておきたいと思う方もいっらしゃるのではないでしょうか?通常、狩猟者登録を行う際にハンター保険というものが必要となります。ハンター保険は猟友会で取り扱っている保険で、狩猟免許保持者が対象の、対物、対人保証をカバーした保険となっています。残念ながら、スリングショットを使用しての狩猟では猟友会へ加入できないため、ハンター保険への加入も不可能となっています。従って、スリングショットで狩猟に行く際は人、物に対して細心の注意を払う必要があります。

スリングショットで鴨を狩るまでの流れ

さぁ、鳥獣保護法も覚え、ハンターマップも用意し出猟の準備はできているでしょうか?まずお伝えしておきたいことは、スリングショットを使用しての狩猟は、装薬銃や空気銃を使用しての猟よりも数段難易度が高いです。装薬銃は散弾を使用するため命中率が高く、空気銃は遠距離からの狙撃が可能なので、ある程度射撃の技術があれば標的に当てられます。自然の中で暮らしている獣、鳥類は総じて警戒心が高く、スリングショットの場合、射程が短いため標的に弾を当てるためには射撃のスキルの前に接近するスキルが重要となります。例えば、カモ類が飛行して回避行動を取る距離は約40メートルと言われており、スリングショットで必中出来る距離まで近づくには気配を消し、姿を隠しながら忍び寄る技術が必要になります。この自然を相手の本気のかくれんぼがスリングショット猟の醍醐味と言えます。

スリングショットで狙える獲物

スリングショットで使用する弾は火薬銃やエアライフルと違い貫通力があるものではなく、初速も圧倒的に劣るため貫いて致命傷を与えるというより、重い球の衝撃力を以て致命傷を与える性質の物です。故に、衝撃を吸収する毛皮を持つ獣に対しての殺傷力は高いとは言えません。スリングショットの玉は様々な物がありますが、ウサギ程の大きさの獣なら、12mm以上の大きさのスチール球を使用すれば狩ることが可能です。それ以上の大きさの獣だと、致命傷を与えるのは難しくなります。ウサギでも胴体部分にヒットさせても致命傷にはならず、頭部にヒットさせて頭蓋を破壊するか、脳震盪を起こさせて捕獲するという流れになります。

スリングショットは自由猟具の中で最も精度が高く威力が高いため、鳥類であれば問題なくすべての狩猟鳥類を狩ることができます。事実、農業従事者の中ではハトの駆除カラスの撃退といった用途にスリングショットは使用されています。

ハンターが好む一番人気の鳥といえば、マガモ、カルガモでは無いでしょうか。これらの鴨は鴨類の中でも大きな部類に入るため、正確にバイタルを打ち抜く技術が無ければ狩るのが難しいです。上述の通りスリングショットで使用される弾は貫通力が有る物ではないため、頑丈な羽で守られたマガモやカルガモの胴体を貫き心臓を狙うという方法は使えません。頭、首、羽の付け根を狙い行動不能にして捕獲するというのが、スリングショットでの狩猟法になります。それでは、具体的にスリングショットで鴨を狩るまでの流れを説明していきます。

スリングショットの射程距離を知る

スリングショットの射程距離は熟練した使い手で25メートル前後と言われています、スリングショットを練習し始めたばかりですと、10メートルの距離でもコンスタントに的を狙い撃つことは難しいでしょう。大体のケースにおいて、実猟で鴨に近づける限界距離が約20メートル程度なので、そのくらいの距離で5cmの的にコンスタントに当てれるように自身の腕をまず磨く必要があります。また、標的との距離がどれくらいなのか分からなければ、どれくらいの角度で弾を放てば良いのか分からないので、距離を目測で測れるよう訓練を行う必要もあります。

服装

スリングショット 狩猟 服装

スリングショットでの狩猟は獲物に見られないよう隠れながら接近しなければならないので、銃猟が行われている場所での狩猟は誤射されてしまう可能性があり非常に危険です。従って、銃猟が行われているエリアに絶対に近づかない前提での説明になりますが、スリングショットでの猟法は忍び猟で、基本的には体を隠し、やぶの中を進むことが多く、服装は目立たない色の長袖、長ズボン、帽子、手袋、動きやすい靴が基本となります。いかに獲物に気付かれず距離を詰められるのかが成果に直結しますので、なるべく周りの草木に同化できるような色や迷彩柄の服を着ていく事をお勧めします。

必要な道具

鴨を狩りに行く際に必要な道具、物は以下になります。

  • 鴨キャッチャーと釣り竿
  • 腸を抜くための道具(ナイフ、ハサミ、腸抜きフック等)
  • スリングショット
  • スリングショットを入れておくケース、カバン
  • スリングショットの弾
  • ハンターマップ
  • 鳥獣保護法のコピー
  • 管轄行政からのスリングショットを利用しての狩猟が問題無い旨の確認メール

鴨キャッチャーは状況によっては必要ない場合がありますが、靴や服を濡らしたくない場合は持って行ったほうが良いでしょう。竿は1000円程度のコンパクトな釣り竿で十分です。

スリングショットでの忍び猟

スリングショット猟 忍び猟

忍び猟とは、読んで字の如く、相手に気づかれないよう忍んで猟を行う方法です。スリングショット猟では大きく分けて二通りの忍び猟の方法があります。

  • 足音を消して忍び寄る
  • 気配を消して射程に入るのを待つ

どちらの方法も音を出さないよう移動する技術が必須ですが、他にも重要な技術と知識があるので紹介していきます。

忍び寄る技術

抜き足、差し足、忍び足と忍者が使っていた歩法の中でスリングショットの忍び猟で使うのは抜き足と忍び足です。抜き足とは周りの障害物を蹴らぬように足を太ももから「抜く」ように持ち上げる動作になります。忍び足とは、足の小指側をまず地面に接地し、接地点を起点に足の裏をしならせる様に徐々に足裏を下ろしていきます。体重を一気に前足にかけないよう、後ろ足に重心を残しつつ、下ろす足の裏が地面に接地しきったあとに重心を移動させます。この歩法を用い、人間が近くにいることを気付かれないよう猟場近くは常に足音を消して歩くよう心がけましょう。

環境音に紛れる

野生の生物は音に非常に敏感です、木の枝を折る音や、草木を揺らすちょっとした音でも感づかれて逃げられてしまいます。いくら忍び足で近づこうと、草むらを抜けたり、小枝が落ちているエリアを通らなければならず、どうしても音を出してします事があります。そういった場合、例えば、風が吹くと同時に移動する、お昼のサイレンのような人工的な音がなっている間に移動するといったように、自身が発する音を他の音の中に紛れ込ませて移動する方法を使います。この方法をうまく使えば、射程距離に入れる確率がぐっと高まります。

獲物から見える体の範囲をできるだけ小さくする

標的のカモの35メートル程近くまで気付かれずにたどり着けたら、そこからが本当の勝負です。万が一標的に見られても気付かれない確率を上げるため、相手の角度から見える自身の体の大きさをできるだけ小さくするよう、匍匐前進か、しゃがみ歩きで残りの距離を詰めていきます。匍匐前進でゆっくり音を出さずに移動するのは非常に体力がいるので、日ごろ運動をしていない方は体力作りが必要になるかもしれません。

ゆっくりと動く

獲物に近づく際に、絶対に素早い動き(普段と同じくらいの速度での動き)をしてはいけません。全ての動きをゆっくり行うことで、万が一目に入っても人間だと認識されない可能性を残せます。カモ類は特に動きに敏感で、距離があっても動くものに対して非常に敏感に反応し、回避行動を取られてしまいます。秒速5センチ程度の非常にゆっくりとした速度で動けば発見される確率を下げられます。この”ゆっくり”というのも非常に体力を消耗する動きなので、最初は苦労するかもしれません。

影に潜む

鴨が太陽光の当たる場所にいる場合、木が多い茂っている場所等の影が濃い場所は鴨から見え辛いようです。体が隠せない場合、そういった影がある場所を通るのも有効です。

スキを突く

カモを狩るにあたって、標的がどんな状態にあるのかによって難易度が異なります。カモが最も油断している時であれば忍び寄るのも容易になります。具体的にはカモがうたた寝をしている時が一番の狙い目になります。マガモ、カルガモは夜行性なので夜に採食をして昼間は寝ていることが多いです。私の経験的に、天気が良く、数日間の過去の気温と比べて暖かい日の午前から午後二時頃までが、うたた寝をしているカモに出会える確率が一番高いです。うたた寝をしているカモに出会えずとも諦めてはいけません、食事中のカモにも忍び寄るチャンスは有ります。

警戒心が低い順で行くと、以下の写真のように寝ているカモ→食事中のカモ→首を縮めているカモ→首を上げている状態のカモの順になります。

鴨 昼寝
寝ているカモ
鴨 食事中
食事中のカモ
浮いてるカモ
首を縮めて水に浮いてるカモ
警戒しているカモ
警戒しているカモ

首を伸ばして、あたりの様子を探っているカモに近づくのはまず無理です、鴨がこの状態なったら、音や姿を見られて感づかれてしまったという事です。警戒が解けるまでその場でじっと待てば警戒を解いてくれるかもしれませんが(はっきりと姿を見られていない場合や、大きな音を出していない場合15分~30分程で警戒が緩くなる事が多いです)、その場所の近くに他にも鴨がいる場合、警戒音を出しながら飛ばれて寝ている鴨を起こされる危険が有るので、刺激しないようその場を静かに離れたほうが無難です。

障害物を設置する

獲物を見つけて逃げられたとしても、その場所でやることはまだあります。狩場は一見するとどのエリアも同じように見えますが、カモにとって居心地が良い場所というのが存在します。大抵は周りが水草に囲まれて姿が隠せ、流れがないような場所ですが、そういうエリアの周りは草木が生い茂っていて、音を出さずに近づくことは不可能な場合が多々有ります。そういった場合、撃つのに丁度良さそうなポイントまでの道の枯葉や木を予めどけて道を整え、草に折り目をつけて射線を通せるようにしておく、体を隠せるように木と草で障害物を設置しておく等自分に有利な地形を整えておく事をお勧めします。また、カモがよく休んでる場所を見つけたら一度スリングショットを撃ってみて、どれくらいの距離から撃てば当たるのか、どれくらいの角度で当たるのか等を、あらかじめ検証、練習しておくと本番での撃ち損じを減らせます。

射程に入るのを待つ

カモがいる場所の近くまで来れてもカモが移動してしまっていて、当初の見立て通りの場所にカモがいない場合があります。そういった場合、体を隠しながら、カモを撃つのに良さそうな場所を見つけるか、自分で草や木を使って体を隠せる場所を作り、ひたすらその場で待ちましょう。カモを追いかけて移動するより、撃ちやすい距離までカモが近づいてくるのを待ったほうが仕留められる確率が高くなります。ただ、カモが一度首を伸ばし、こちらの様子を見ながらスーッと離れてしまった場合、それはカモの第一段階の回避行動です、戻ってくることは絶対に無いので諦めましょう。

鴨が食事中の場合頻繁に移動するので、敢えてカモがいる場所から少し離れた場所に忍び寄り待ち伏せるという方法も有効です。待ち伏せの最大の利点はカモが至近距離まで寄ってくれる可能性があることです。全く動かず、体の大部分がカモから隠れている場合、三メートルほどの距離でもカモが気付かないという事もあり得ます。筆者はカモを狩るために藪の中で3時間じっと待っていたことがあります。警戒心が高い野生のカモをスリングショットで狩るのはそれほど大変なことなのです。

バイタルに命中でも気を抜くな

スリングショットでの狩猟を始めたばかりのころは、カモに近づくことに失敗し、ようやく近づけても球を外したりと幾度もの失敗経験するでしょう。そんな中、ようやっと鴨に球が命中、ひっくり返る姿を見れたときの喜びはひとしおです、あなたはきっと興奮で急いでカモに駆け寄るでしょう。しかし、そこで気を抜いてはいけません。ひっくり返って致命傷を与えたと思っても、脳震盪を起こしてるだけかもしれません、カモ回収の準備をする前に、確実にとどめを刺せるようすぐ二の矢の準備をしましょう。すぐ回収できる位置にいるなら、すぐに回収を行い、カモキャッチャーを使用しなければならない位置なら、完全に動かなくなるまですぐに撃てる準備をして様子を見ましょう。痙攣が起こっていれば致命傷を与えられています。

 

その他

猟場ではハイキングや山菜取り、犬の散歩など様々な目的を持った人に会います。そういった方達に必要以上に不信感や警戒感を抱かせないよう、積極的に挨拶をしましょう。

スリングショットでの狩猟は体力をかなり使います。冬の猟期でも汗をかく事は不可避ですが、藪の中に入る時はマダニに咬まれる可能性があるので、なるべく肌を露出しないようにしましょう。

生き物を殺すということ

猟師としての資質があるかどうかは、止め刺しを自分の手で行えるかどうかが大きいです。大体の人はまだ生きている鴨を捕獲してナイフで血抜きをすることに生理的な拒否反応を感じるでしょう。それは今まで、肉を食べるときに命を貰っていたという事実を強烈に意識せざるをえない瞬間です。ごめんなさいという感情と、ありがとうという感情を感じながら止め刺しを終えたあなたを待つ次の作業は、解体作業です。内臓を取り出すのは気持ちのいい作業ではありません。羽を毟り、内臓を出し部位を切り分けて肉にする。これでようやっと、おいしい肉にありつけるのです。初めて自分の手で命を奪う事、解体をする事は間違いなく衝撃的な体験になります。スリングショットでの狩猟は、生き物の命と本気で対峙するという意味で非常にドラマチックな経験をあなたに与えてくれるでしょう。

まとめ

自由猟法といっても使用してはならない方法や守らなければならない法律等ご説明しました。自由猟具を使用しての狩猟は免許も、許可もいりませんが、それは鳥獣保護法の範囲内の話で、鳥獣保護法は必ず理解してから出猟しなければなりません。使用できる自由猟具はいくつかありますが、鴨を狩るのならお勧めは高精度、高威力のスリングライフルです。スリングショットで鴨を狩るには自身の腕と忍び寄る技術の両方があって初めて可能になります。スリングショット猟の難易度は法定猟具を使用した狩猟の何倍も難しいですが、ほかの方法では味わえない自然相手の本気のやり取りが味わえるのもこの猟法の魅力です。自身を鍛え、初めて獲物を狩ることができた時の喜びを是非味わってみてください。

スリングショットの事をもっと詳しく知りたいという方のためにすべての知識を網羅したページを作成しました。こちらのスリングショットのページからご確認ください。

2件のフィードバック

  1. しかし体力や技量がかなり必要っていうのが話のミソかなと思いました。
    できたらカッコイイですけどね。

    ただ私めの環境は斜面で、石垣で区切られた細長い果樹園や畑になってます。なので石垣と柵の配置次第では、ヒヨドリ等の20m以内に近づくのはそれほど難しくない気もします。

    こうした地形はウチの近所には山程あり、スリングショットには最適だと思ってます。ただ人様の農地であり、交渉が不可欠なので、私めはいっそ来年狩猟免許を取ってから始めようと思ってます。練習に時間かかりそうですし。

    高級スリングライフルも見ましたが、あの外観ではお隣さんがギョッとします。
    御社の製品はぎりぎりセーフという気もしますが在庫もないそうなので、私めは昔ながらのパチンコに行っときます。

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